『攻殻機動隊』最新アニメ、作家・円城塔が脚本担当 小説『Shadow.net』から読み解く原作漫画の濃度と期待

■『Shadow.net』から考察する最新アニメ版の内容
ただ、登場キャラクターのセリフ回しは、抑制的なトーンながら『攻殻機動隊』っぽいものとなっている。途中で挟まれるバトーとトグサの会話は説明的なセリフが削り取られており、「この二人の会話ならこうなるだろう」という、必要最低限の情報とドライなユーモアが盛り込まれたものとなっている。この会話のテンポやセリフ回しのドライさは原作漫画版に色濃い要素で、円城塔が相当に士郎政宗作品を読み込んでいることが伝わってくる。
作品としては短いものながら、現代のサイバーパンクSFらしいテーマ設定と原作に準拠した要素が高い精度で盛り込まれている『Shadow.net』。本作を書き上げた円城塔が参加する『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』も、おそらく一筋縄ではいかない作品になることが予想される。草薙素子の見た目やフチコマの登場は原作漫画を意識したものだし、部分的には原作のテイストの濃い箇所もあることは予想できる。
同時に、おそらく原作漫画をそのまま映像化した作品にもならないのではないだろうか。『Shadow.net』のテイストは原作漫画版のどこか楽天的で明るいテイストとも異なり、ハードで影のある雰囲気も漂っている。また、情報生命体との邂逅がテーマのひとつだった原作漫画と比較すると、そこから発展してさらに奥にまで踏み込んだ内容ともなっている。この点から推測するに、おそらく『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』は原作漫画をベースとしつつ、さらに射程の長いテーマや問題意識が盛り込まれた、噛みごたえのある作品となるのではないだろうか。
SF小説家が参加した『攻殻機動隊』としては、冲方丁がシリーズ構成を担当した『攻殻機動隊 ARISE』があり、この作品でも新たな解釈が示された。ビジュアル面が一新されるであろう今回の『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』でも、シリーズに新たな展開が期待できる。円城塔の参加により、どのようなテイストが『攻殻機動隊』にプラスされるのか、楽しみに待ちたいところだ。