押井守『イノセンス』原作コミック『攻殻機動隊』とはどう違う? ポイントとなる「人形」への感情移入

劇場公開から20周年になるのを記念して、『イノセンス』4Kリマスター版が、2月28日から2週間限定で劇場公開されている。この映画は原作コミック『攻殻機動隊』の1エピソードを下敷きとしているものの、並べて見るとかなり味わいが違う作品だ。
押井作品の中でもエンタメ寄りで分かりやすい

『イノセンス』がベースとしているのは、コミック版『攻殻機動隊』のエピソード「ROBOT RONDO」である。ストーリーの大筋は映画とほぼ同じ。愛玩用ロボット「トムリアンデ」が暴走し、人間を襲う事件が頻発。公安9課のバトーとトグサは事件を追うが、その裏にはロボットメーカーの非人道的な製造プロセスが隠されていた……というお話である。
が、それ以外の味付けは大きく異なる。『イノセンス』では前作『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で草薙素子に去られたバトーのウェットな孤独がより浮き彫りになり、(監督の趣味もあって)バトーの飼い犬ガブリエルにより「犬」の要素が加わった。さらに暴走した「人形」へのフェティシズムやハッカー・キムが仕掛けた迷宮のような擬似現実、陰鬱な2032年の世界や択捉経済特区のアジア的祝祭空間など、原作から変化したポイントも多い。
さらに言えば『イノセンス』は(押井作品にしては珍しく)エンターテイメント方向に振った作品でもある。ストーリーに難解さはほとんどなく、引用が多用されたセリフには戸惑うかもしれないが、素直に見ていけば内容はちゃんと把握できる。紅塵会事務所の襲撃シーンやロクス・ソルスのガイノイド製造プラントへの突入シーンなど、直球のアクションシーンも満載。なにより、終盤で素子がバトーの前に出現し、共にガイノイドの群れと戦うシーンはエモーショナルだ。初めて見た時、押井映画としては意外なほど直球のエンターテイメントだったので、かなり驚いた記憶がある。























