粗品の“辛口すぎる”審査の裏にあった大阪愛 専門家に聞くM-1審査員の可能性は?

 3月2日に開催された『ytv漫才新人賞決定戦』で、初の審査員を務めた霜降り明星・粗品。その評価方法やコメントは話題を呼び、SNS上でも賛否が巻き起こった。

 本稿では、お笑いに詳しいライターの鈴木旭氏にインタビューを行い、粗品の審査基準や背景にある大阪芸人への思い、さらには『M-1グランプリ』審査員の可能性までを深掘りした。

粗品の評価方法――今までの審査への違和感

 粗品の採点が低めに揃えられていたことは、特に注目を集めた点の1つだ。彼が最初につけた85点を皮切りに、70点台の評価も相次いだ。これは、近年の『M-1グランプリ』など、既存の賞レースにおける採点基準への違和感の表れではないかと鈴木氏は分析する。

「最近の『M-1グランプリ』は、最初から点数を高くつける傾向がありますよね。良くも悪くも注目度が高い大会になったことで、審査員も視聴者からの“見え方”を気にしているのではないでしょうか。その結果、90点台でスタートすることが多く、点数がインフレしがちです。粗品さんは意図的に基準を85点からスタートし、自分の中での適正な評価を試みたのだと思います」

 また、彼のコメントも従来の審査員とは一線を画していた。「そこまで面白くなかった」「ウケてなかった」とストレートな言葉を交えながら、より良い漫才を生み出すための具体的なアドバイスを行っていたのが印象的だった。

「新人戦という大会の特徴も大きかったと思います。言うべきことは言わなければという自覚があり、その上で「今こうなっているから良くない」「こうするんだったら、このパターンもある」と的確なフォローをしていました。
短時間でネタを分析し、それを言語化できる粗品さんの能力は、漫才師の中でも類まれなるものだと思います」

ダメ出しの背後にある大阪愛

 『ytv漫才新人賞決定戦』は、大阪を拠点に活動する若手芸人を対象にした大会だ。粗品が今回のような審査を行った背景には、彼自身が大阪で成長してきた経緯があるという。

「関西の芸人は、関東に比べて縦の繋がりが強い印象があります。粗品さんも“トガっている”イメージを持たれがちですが、ラジオ番組での発言やYouTubeを観ていると、信頼する先輩の言葉は素直に受け入れている印象です。今回の審査も単なる批評ではなく、若手にとって意味のあるアドバイスをしたかったのでしょう」

 例えば、粗品は過去に芸名で悩んでいた際、ガクテンソクの奥田に「『粗品』っていう名前で売れてるビジョンが思い描けない」と不安を吐露したところ、「でも、さんまさんは『さんま』で売れてるからな」と言ってもらったことをきっかけに、今の名義で活動することを決意したという。こうした経験が、彼の後輩への向き合い方に影響を与えているのかもしれない。

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