NON STYLE石田と令和ロマンくるま、M-1連覇を振り返る “漫才オタク”ならではの「考察」と「理論」を連発

NON STYLE石田と令和ロマンくるま 対談

 昨年10月31日に発売されたNON STYLE・石田明による著書『答え合わせ』(マガジンハウス)と、11月8日に発売された令和ロマン・髙比良くるまによる著書『漫才過剰考察』(辰巳出版)のヒットを受け、両者が登壇する対談イベントが2月10日、東京・代官山蔦屋書店にて行われた。

『M-1グランプリ』で2008年にチャンピオンとなり現在は同番組の決勝の審査員も務める石田と、2023年、2024年と前人未到の2連覇を成し遂げたくるま。舞台の最前線に立つ二人の口から語られる貴重な“漫才論”を聞くため、会場には多くのファンが詰めかけた。

「過去イチ盛り上がった」2連覇に石田も「手がプルプルしました」

©マガジンハウス・辰巳出版(撮影:北原千恵美)

 話は冒頭からさっそく、令和ロマンが2年連続のチャンピオン達成を成し遂げた『M-1グランプリ2024』の話題に。石田が「すごくないですか!? びっくりしましたよ」と振り返ると、会場からも大きな拍手が起こる。NON STLEも2009年に2連覇をかけて決勝に進出しているが、「(ネタ作りが)やっぱ間に合わなかったもん」と説明し、テレビ出演をおさえて舞台でネタを仕上げていった令和ロマンを称賛した。それを受けてくるまは、年間に600ステージもの舞台に立ちはしたものの、一度優勝をしたことでファン以外の幅広い客層が漫才を見にくる状況だったと説明。「ホームの目では見られなかったから、一番フラットな1年でした。面白かったらウケるし、面白くなかったらウケない。そういう確実な600回でした」と、舞台での充実したネタ作り環境が昨年の2連覇に繋がったと明かした。

©マガジンハウス・辰巳出版(撮影:北原千恵美)

 石田は決勝を審査員という立場から見ていたが、「過去イチ盛り上がった」とし、令和ロマンが1本目に披露した漫才『名字』について、「“あるある”で大爆笑まで行くってめちゃくちゃ難しい」と会場のファンに説明。続けて「“あるある”をトップ出番で持ってきたときに、くるまが本気で『M-1』というものを盛り上げたいんやって思った」と振り返ると、「あるあるネタのいいところは、その後の人のネタに影響しないところ」と解説。大喜利ネタや大きな伏線を回収するネタではなく「あるある」で笑いを重ねた令和ロマンの漫才『名字』が現代では珍しく難しいと語ると、「よくね、『M-1』チャンピオン2年連続というプレッシャーを乗り越えてやったな」と褒め称え、「審査するときに手がプルプルしましたよ……」と審査員の心境を語った。

 最終決戦は「バッテリィズ」「令和ロマン」「真空ジェシカ」の3組が進んだが、これについてくるまは「真空ジェシカと俺らは最終決戦に行くって思ってたんですけど、あと1組が誰かによって俺らの優勝が決まると思ってた」と語る。残る1組が「ヤーレンズ」だった場合は令和ロマンは負けるとし、「速い漫才コント2組と俺らの遅いネタで、2対1になってしまう」と独自の理論を展開。2021年の大会を例に出し、「錦鯉さんにオズワルドさんが負けた印象ですが、オズワルドさんはインディアンスさんと錦鯉さんに負けたんですよ」と解説し、他2組に会場の流れが持って行かれてしまい、結果的に負けてしまうだろうと独自の理論を語った。

最終決戦3組に残るプレッシャー

©マガジンハウス・辰巳出版(撮影:北原千恵美)

 漫才のトップを選ぶ『M-1グランプリ』。最終決戦3組に残るということについて、石田は「2008年はNON STYLE、オードリー、ナイツで、会場は完全にオードリーの雰囲気になってた」と述懐。そんな中、元吉本興業会長の大崎洋氏が目の前にあらわれ、「今、吉本の運命があなたたちの肩にのしかかりました」と言われたと明かし、「……まあ、激励ですよ(笑)。でも、初めて大崎さんに目を見てあいさつしてもらえましたから、ちょっと認められて嬉しかったんですよね。完全にオードリーの空気やったけど、やるしかないって気持ちになった」と当時の出来事を語った。

 くるまは、2年連続優勝のためには「1位通過がマストだと思ってた」と説明。その理由として、連覇がかかった状況で令和ロマンには最終決戦で票が入りにくいと考えており、「連覇に票を入れるのは審査員も度胸が必要だから、マックス4票か3票だろう」「そして(審査員9名の票が)4-4-1か、3-3-3になるだろう。同点になったときにファーストステージで得点が高いほうが勝つので、それで優勝という形になるのを狙ってたんです」と語った。

 続けてくるまは票を獲得するための作戦も解説。「礼二さんと塙さんからは絶対に票がもらえると思ってたんですが、あと1人を考えたときに大吉先生に票を入れてもらうしかないと思ったんです」と明かし、ストップウォッチを持参する博多大吉の票を意識しネタ時間を短くするなどの対策を行なっていたと説明した。

 その他、バッテリィズについての「漫才が一周回ったと思った」というくるまの発言や、真空ジェシカの最終決戦ネタの真相について石田が川北茂澄に直接話を聞きに行ったという発言など、濃密な話が飛び出したこの日のイベント。

 連覇の偉業を達成したくるまだが、今後の『M-1』出場について石田に聞かれると、「想定しているのが、何年後かにアメリカからUSA漫才オールスターズみたいなやつらが『M-1』に大量にエントリーしてきたときに、日本を守るために出ようかなと思ってます」と願望を語り、石田も「そんときは俺らも出させてくれよ!」と会場の笑いを誘った。

話題の漫才論、次作への展望も

 石田の『答え合わせ』は、NSC(吉本総合芸能学院)で講師を務める“生粋の漫才オタク”である石田が、「漫才論」「M-1論」「芸人論」を語り尽くした一冊で、読むだけで漫才の見方が一気に「深化」する新たな漫才バイブルとしてまとめた著書。

 くるまの『漫才過剰考察』は、WEBマガジン「コレカラ」での連載「令和ロマン・髙比良くるまの漫才過剰考察」に、大幅な書き下ろしを加えた一冊。『M-1』が再開した2015年から自身が優勝した2023年大会、さらには2024年の予想に至るまで語り尽くした最新版漫才論だ。

 この日のイベントは2部構成で行われ、後半は石田のYouTubeチャンネル『よい~んチャンネル』でも配信予定となっている。

 互いの著書について感想を求められると、石田は「臨場感があって読みやすい。自分のやって来たことを追随して書いてくれているから、すごい読みやすいし勉強になりました」と絶賛。一方のくるまも「お笑いの本って“これじゃん”って思いました」とコメント。執筆中に石田の本を読む機会があったようで、「石田さんが正しいお笑いの教科書を書いたから、まず“ですます調”をやめて自分の主観だけを書くようにしたんです」と文体に影響を受けたことを明かした。

『漫才過剰考察』は実際に喋った言葉を文字起こしし、それを推敲して喋り直す手法で書かれたもので、連載の加筆修正に9か月がかかったという。

 その様子を石田も目撃したようで、「締切にホンマに間に合ってなさそうで、『ラヴィット!ロック2024』のリハと本番の間に一度家に帰って書いてたよね。……地獄みたいな顔してた(笑)」と当時の裏話を明かした。

 休憩を挟んで1時間30分に渡って行われたこの日のイベントでは、両者の著作にも書かれている濃密な漫才論が隙間なく展開された。くるまは、今後の執筆について聞かれると、「でももう本書くのホントにしんどいんですよ……人生で一番しんどかった」とうなだれながらも、「ありがたいことに日々自分が成長していて話にならないんですよ。怖いんですよ、今年の年末ぐらいに自分が成長しすぎてこの本のことを認められなくなったらどうしようって」と、漫才への“考察”がさらに進化しているとコメント。それを受けて石田は、「俺は、『答え合わせ』の『答え合わせ』を書こうと思ってる。“前回のやつ全部間違ってました”って(笑)」と今後の展望を語った。

【登壇者プロフィール】

NON STYLE・石田明

お笑いコンビ「NON STYLE」のボケ、ネタ作り 担当。1980年2月20日生まれ。大阪府大阪市出身。

中学時代に出会った井上裕介と2000年5月にコンビ結成。神戸・三宮でのストリート漫才で人気を博し、baseよしもとのオーディションに合格してプロデビュー。 2006年「第35回上方お笑い大賞」最優秀新人賞受賞、「第21回NHK新人演芸大賞」演芸部門大賞受賞、2007年、NHK「爆笑オンエアバトル」9 代目チャンピオン、2008年「M-1グランプリ2008」優勝など、数々のタイトルを獲得。 2012年、2013年、2年連続で「THE MANZAI」決勝進出。 「M-1グランプリ2015」では決勝の審査員を、「M-1グランプリ2023」では敗者復活戦の審査員を務めた。 2021年から、NSC (吉本総合芸能学院 )の講師を務め、年間1200人以上に授業を行っている。ゲストの芸人とともにお酒を飲みながら漫才論や芸人論などを語るYouTubeチャンネル「NON STYLE石田明のよい~んチャンネル」も人気。

令和ロマン・髙比良くるま

お笑い芸人。吉本興業所属。1994年生まれ、東京都練馬区出身。

慶應義塾大学のお笑いサークルで相方・松井ケムリと出会いコンビを結成。「M-1グランプリ2023」では、第1回大会の「中川家」以来のトップバッター、かつ歴代王者の中で最短となる芸歴5年9ヶ月で優勝。M-1王者として異例の出場となった「ABCお笑いグランプリ2024」でも優勝し、「M-1グランプリ2024」にも出場。再びトップバッターとなったものの、圧巻の漫才を披露し、前人未到のM-1グランプリ二連覇を果たした。

■書誌情報
『答え合わせ』
著者 石田明
出版社 マガジンハウス
サイズ 新書並製 173×109×13mm
頁数 240p
定価 1,100円(税込)
発売日 2024年10月31日

『漫才過剰考察』
著者 令和ロマン・髙比良くるま
出版社 辰巳出版
サイズ 四六判 127×188×14.6mm
頁数 184p
定価 1,760円(税込)
発売日 2024年11月8日

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