『メダリスト』オリンピックの金メダルには何点必要? 主人公・結束いのり、演技構成や必要条件を考察

『メダリスト』いのりがメダルを獲るには?

 放送中のTVアニメも話題のフィギュアスケート漫画『メダリスト』は、主人公の結束いのりと新米コーチ明浦路司がタッグを組み、オリンピック金メダリストを目指す物語だ。本稿では、実際の2022年北京オリンピックのメダリストたちを参考に、いのりがオリンピック出場、そして優勝をするための必要条件やジャンプなどを考察したい。

そもそも出場までが超難関!オリンピック選手になるための必要条件とは?

 4年に1度のスポーツの祭典「オリンピック」。フィギュアスケートには、世界選手権をはじめ国際大会が複数あるが、他のスポーツ同様、やはりオリンピックは特別な舞台だ。

 そのため、そもそも出場するまでが超難関だ。北京オリンピック開催時、日本スケート連盟が定めた女子シングル選手の出場条件は、

全日本選手権優勝者

以下のいずれかを満たす選手から総合的に判断して1名選考。

A)全日本選手権2位、3位の選手
B)ISU グランプリファイナル出場権を得た選手
C)全日本選手権終了時点のシーズンベストスコア上位3名
のいずれかを満たした選手

以下のいずれかを満たす選手から総合的に判断して、①、②で選考された選手を含め3名に達するまで選考。

A)②の A)B)C)に該当し、②の選考から漏れた選手
B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3名
C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3名
D) 全日本選手権までに派遣された国際競技会、および強化部が指定した国内競技会におけるシーズンベストテクニカルスコア上位 2 名

となっている。
※公益財団法人 日本スケート連盟発表「2021-22 シーズン 国際競技会派遣選手選考基準」参照

 ちなみに、条件①は基本的に出場が確約されるが、②③に関しては条件を満たした選手の中から、過去の戦績なども加味して相対評価で選ばれる。オリンピックの出場枠は、最大で3枠のみ(前年の世界選手権出場選手の合計順位が悪いと2枠)。そのため、全日本選手権3位以内でも、シーズン通しての戦績や他選手との比較でオリンピック出場を逃すケースもある、狭き門なのだ。作品初期いのりは、全日本選手権での優勝を目標に掲げていたが、実際2位や3位ではなく、全日本選手権で優勝することがオリンピックへの1番の近道なのである。

現役メダリストから考察!勝つために習得必須のジャンプは?

 2022年北京オリンピックで金メダルを獲得したのは、ロシアのアンナ・シェルバコワ選手(当時17歳)だ。彼女の成績は、ショートプログラムは80.20点、そして構成要素の数が多いフリープログラムは175.75点、合計255.95点だった。いずれも高い得点だが、大きな勝因は4回転を駆使した男子顔負けの技術点と、ノーミス演技で全要素加点を積み上げたフリープログラムだった。

 当時のシェルバコワは、男子スケーターでも飛べる選手が少ない4回転フリップを2本(単体とコンビネーション)成功。また、作中の名港杯ノービスBで狼嵜光も飛んでいた3回転ルッツ+3回転ループなど、4回転以外のジャンプもすべてクリーンに着氷し、男子顔負けの技術点100点越えを成し遂げた。さらに、ミスのない演技と高い表現力で、他のプログラム要素でも大幅に加点を獲得し優勝したのだ。

 4回転ジャンプを複数飛べる彼女に、当時の日本代表はジャンプなどの技術点で20点以上もの差をつけられていた(北京五輪女子シングルでの日本人選手の最高順位は坂本花織の3位)。

 現在ロシア人選手は国際大会には出場できなくなっている※が、彼女に続く、高難度ジャンプを飛べる選手がいない今、女子シングルの試合は2回転アクセル(基礎点3.3点)や3回転ジャンプのみの構成が主流で、技術点はどの選手も拮抗している。いのりが金メダルを確実に狙うのなら、3回転アクセル(基礎点8.0点)や4回転のコンビネーションジャンプ習得が必須といえるだろう。
※ウクライナ侵攻を受け、ロシアとベラルーシの選手は2022年3月1日より国際大会への出場権を剥奪されている。しかし、2024年12月20日に国際スケート連盟から、軍に所属していないなどの条件つきで「中立な立場の個人資格の選手」として2026年のミラノオリンピックへの出場が認められた。

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