OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』
オカモトショウが語る、いまイチオシの青年漫画2作品! 『ハヴィラ戦記』&『だれでも抱けるキミが好き』を読め

——そして『だれでも抱けるキミが好き』。こちらは既に大人気です。めっちゃ面白いんですけど、何がどう面白いのか言語化がむずかしく……。
“童貞の男子高校生が、誰とでもセックスしちゃうギャルに恋する”ってだけですからね(笑)。マンガも音楽もそうなんだけど、「絶対にこれをやりたいんだ」という思いが溢れてるものって、やっぱり伝わるんですよ。同人誌をめちゃくちゃ集めている友達に選りすぐりの何冊かを読ませてもらったことがあるんですけど、そのときにパンクバンドのソノシートを聴いたときと同じような気持ちになって。
——初期衝動ですね。
そうそう。「これをやりたい」というピュアなエネルギーが漲っているというか。『だれでも~』もまさにそういうマンガだなと思うんですよね。もちろんマンガとしてもめちゃくちゃ面白いんだけど、ビッチなギャルのアガワさんのお姉さんが登場して、さらにすごいことになって。アガワさんはセフレがたくさんいるんだけど、主人公のゴトウはけっこう真面目に付き合いたいと思っているんですよ。
アガワさんもちょっと気持ちが動いているんですけど、お姉ちゃんがそれを見て、ゴトウを奪おうとするんです。意地悪なところがあるというか、アガワさんの大事なものを欲しがるところがあって、ゴトウを誘うんですよ。そしたらゴトウが断るんです。そのまま連載は進んだんだけど、2~3週間経ったときに作者がいきなり“ゴトウがセックスを断ったことはナシ。3Pを描きます”って言い出して、本当に描いちゃったんですよ。
——「断ったんじゃなくて、3Pした」という話にしちゃったんですか?
そう、時間を巻き戻しちゃったんです。ストーリー的な狙いがあったわけではなくて、単に「やっぱり3Pしたことにします」っていう。連載の最後にいつも編集者かたのコメントが書いてあるんですけど、そのときは「これで気が済みましたか」って(笑)。その回を読んだとき、『涼宮ハルヒの憂鬱』のループ(エンドレスエイト)を思い出したんですよね。(“夏休みをループさせる”というストーリーを描くために、ほぼ同じストーリーを8週に渡って放送)あれは本当に革命的だったし、観てる人たちも頭がバグっちゃって(笑)。ただ『だれでも~』の場合は「3Pを描きたいから描いた」ってだけですけどね。それをやっちゃったら、何でもアリじゃないえすか。「このキャラクターはやっぱり死なないことにします」とか何でもできちゃうから、時間を巻き戻しちゃいけないんですよ(笑)。
——確かにそれはパンクですね。
賛否はあるだろうけど、これもマンガの面白さだと思いますね。アニメとも実写とも違って、作者がすべてのキャラを作って、動かしているからこそ、こういうストーリーが成立しちゃうっていう。不思議な魅力があるマンガだと思います。
——ちなみにアガワさんが性に奔放になった理由とか、その奥にある闇みたいなものは描かれないんでしょうか?
若干ありそうな気もするけど、なくてもいいと思う(笑)。アガワさんはぜんぜん可哀そうな子としては描かれてなくて、それもすごくいいんですよ。ゴトウもすごく真っ直ぐだし、いいセックスしてるなって思います(笑)。少年マンガだったら「やれそうでやれない」という展開になるのかもしれないけど、「だれでも~」はすぐやっちゃう。それもリアルでいいんじゃないかなと。既に人気が出てますけど、単にエロいからではなくて、文化的な文脈で読まれているみたいなんですよ、このマンガ。
『ハヴィラ戦記』を読みながら聴きたい曲
YG Marley「Praise Jah In The Moonlight」
ボブ・マーリーの孫であり、ローリン・ヒルの息子でもあるYG Marleyのデビューシングル。ボブ・マーリーの映画(『ボブ・マーリー:ONE LOVE』)を観たんですけど、島での暮らしだったり、土着の宗教だったり、支配への抵抗という部分が「ハヴィラ戦記」に通じてる感じがあるなと。あえて孫のYG Marleyの曲を選びましたけど、この曲、いいんですよ。ボブ・マーリーの孫だけど、すごく自由にやってる感じがあって。




















