『ダンまち』3つのクライマックスはどこへ向かう? TVアニメ、小説本編、小説外伝……それぞれの壮絶な展開

『ダンまち』3つのクライマックスはどこへ向かう?

本編とリンクする小説外伝

 何が起こったのか? それが、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア15』に描かれていて、ベルの冒険のかたわらで恐怖しか感じられない出来事が起こっていたことを告げる。外伝『ソード・オラトリア』はアイズを主人公としたシリーズとなっているため、アイズが所属する【ロキ・ファミリア】の動静が中心に描かれていて、【ヘスティア・ファミリア】メインの本編からは分からないエピソードに触れられる。ひとつが、アイズをめぐりその出生に謎があり、それはダンジョンの秘密とも大いに関わるものであること。これが、北方でベルが対峙した危機とは違った影響を、『ダンまち』シリーズの世界に及ぼしている。

 外伝第15巻ではそうしたダンジョンの真相に近づくために、アイズたち【ロキ・ファミリア】が未踏の60階層攻略に挑むストーリーが描かれる。相当な危険が予期されたが、そこはオッタルと同じレベル7に上がった冒険者が3人もいて、他の派閥からも強者が集められた派閥連合で挑むことになったことで、成功も予見された。

 甘かった。60階層に入った途端に始まるかつてない規模と威力でのモンスターによる襲撃が発生。凄絶としか言い様がないバトルが間を置かずに繰り広げられては、読む人の心を恐怖にすくませる。ここで読む手を止めたいと思わせる一方で、この先に希望が見えるのかもしれないとページを繰らせ、さらなる絶望をぶつけて唖然とさせる。誰の命も奪われないことが前提にあった派閥大戦がゲームなら、こちらは本物の死が待ち受ける戦場での白兵戦。シリーズでも過去最大級の戦慄を味わって心はどん底へと叩き込まれる。

”少年が歩み、女神が記す、ーー【眷族の物語 (ファミリア・ミィス)】ーー”
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』はどこへ向かうのか

 外伝第15巻のラストに描かれる光景を本編第20巻のエピローグでベルが目にしたことで、本編と外伝がひとつになって、物語の世界に大きな山場が訪れていることを実感させる。ここからいったいどうなるのか。そもそも何かできるのか。そんな絶望感すら浮かぶが、『ダンまち』という物語はまだ完結していない。どん底へと叩き込まれたのだとしたらあとは這い上がるだけだ。

 何より主人公のベルがまだそこにいる。【ヘスティア・ファミリア】の仲間たちも揃っている。最強のオッタルやTVアニメの第5期で注目を集めた戦うヒーラーのヘイズ・ベルベットも含めた【フレイヤ・ファミリア】の残党もほぼ健在だ。そんな強者たちが一丸となり、ベルのアイズに向ける憧憬が臨界突破すればきっと巻き返せるはずだ。

 そんな期待感を抱いて次の巻を待ち望むドキドキ感は、本編と外伝を読み終えていてこそ最大限に味わえる。だから読んでおくことをオススメしたいが、アニメの方のクライマックスもやはり気になるところ。そちらを追いつついずれアニメ化されるだろう続く展開を待つのも悪くない。

 楽しみ方は人それぞれにあるのだから。

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