松下洸平、初エッセイに綴った激動の3年半「マイナスの感情もそれだけでは終わらせたくない」

松下洸平、エッセイ「フキサチーフ」を語る

 初のエッセイ集『フキサチーフ』(KADOKAWA)を、12月13日に発売した松下洸平。本作は雑誌『ダ・ヴィンチ』にて2021年4月号から2024年1月号までの連載分に、2篇の書き下ろしを加えた36篇が収録されている。

著・松下洸平『フキサチーフ』(KADOKAWA)

フキサチーフとは、絵画が色褪せたり擦れて剥げてしまわないように最後に吹きつける定着液のこと。「この連載が、僕自身の日常のフキサチーフになればいいな」と、つけられたタイトルだ。その願い通り、彼の人生の一部が色鮮やかに記されている。

 大事な家族とのちょっぴり切ない思い出に、忙しい日々のなかでクスッと笑ってしまった愛しい出来事。まだ何者にもなれていないころから探し続けてきた「居場所」について……。ここまで赤裸々に語られたことはないのではと思わせるほど、松下洸平という人を知ることができる1冊となった。

 「ここでしか書けない思いがあるんだなと思っていました」と連載時を振り返る松下。自分自身の気持ちを整理する日記のようであり、そして読み手となる「あなた」に宛てた手紙のようなエッセイ。それがどのようにして生まれたのか、過ごしてきた時間を慈しむようにじっくりと語ってくれた。

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CDをジャケット買いするように「この本なんか面白そう」と手に取ってほしい

――発売から少し経ちましたが、反響はいかがですか?

松下:いろんな方からの反響があって、とてもありがたく思っています。今『with MUSIC』(日本テレビ系)という番組で、ご一緒させていただいてる有働由美子さんが、わざわざ本屋さんで買って現場まで持ってきてくださいました。「サインください!」って(笑)。

――なんて素敵な! さすが、有働さんですね。

松下:本当、とっても嬉しかったです。心をこめてサインさせていただきました。

――本の中には光石研さんについて綴られた章もありましたが。

松下:そうだ! 光石さんにも言わなきゃ! エッセイで書かせていただいたことはお伝えしているんですけど、本になったことはまだ直接ご連絡していなかったので。この後、お伝えしようと思います。

――トークイベントでは紙の色や触感にまでこだわって作られたとおっしゃっていました。松下さんの顔写真が帯のところにしかないのも松下さんの案ですか?

松下:帯に関してはお任せでした。ですが、僕としても「松下洸平の本だから」と手に取ってくださる方はもちろん、僕の本だと知らずに「なんかこの本面白そうだな」と思って手に取ったのが、たまたま僕の本だったってなってくれたら、それはそれですごく嬉しいなという思いはありました。CDのジャケット買いみたいに、「このアーティストのことをよく知らないけれど買ったらすごくよかった」と思ってもらえたらいいなって。

――表紙カバーのイラストも松下さんが描かれたんですよね?

 松下:そうです。この絵はアクリル絵の具と色鉛筆とコピックペンで描きました。表紙を描かせていただくことが決まった時点で、なんとなく「飾り気のない住宅街の道に立ってる自分」っていうイメージがあって。そんな自分が思い描いてる理想の道を探して休みの日に歩き回ってロケハンしました。

――では、実際にあるんですか? この道が!?

松下:はい(笑)。そこで写真を撮ってプリントアウトしたのを見ながら描いたんですけど、さすがにそのままだと、周囲の住人の方が驚いてしまうなと思って、レンガとか壁の色とかちょっとだけ変えています。

連載中は「アンテナがずっと張っていた」 続編にも期待

――文章はどのように執筆されていたのでしょうか?

松下:1つの章を書き上げるのがだいたい3~4時間。ノートパソコンとにらめっこしながら書いていました。それを担当編集者の方にお送りして、より読みやすくなるようにアドバイスしていただいて……。直していきながら、やっぱり書き方によって伝わり方は全然違うんだなっていうのは毎回すごく感じていました。「なるほど、こういう風に直すと読みやすいのか」とか「こういう風に表現するとより僕の思いがもっと伝わるのか」と、連載しながら学ばせていただきました。

――挿絵も毎回描かれていたんですよね?

松下:そうです。これは原稿を書き終えた後に、下描きなどほとんどしないで描いていました。モノクロで掲載されるので、限りなく白に近い色から真っ黒に近い色までコピックペンを5~6本を使って、細かな線は0.05mmのペンで。それをパソコンに取り込んで送っていました。

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