文学の新人賞……相次ぐ盗作にどう対応? 不正行為を防ぐための方法はあるのか
■盗作を撲滅することは難しいのか
出版社が新人を発掘する場として重要視し、各社が主催しているのが新人賞である。こうした新人賞は、あくまでも性善説に則って行われている。つまり、盗作やパクリなどの不正行為がないことが原則だ。しかし、残念なことにいつの時代も不正行為はなくならず、後になってから賞が取り消される例が後を絶たない。
今年も、PHP研究所・児童書出版部が9月30日に発表した「第13回 54字の文学賞」の受賞作「高校生大賞」が盗作だったとわかり、同社は受賞を取り消すと発表した。オリジナル作家の指摘によって発覚し、同社は「作家様の迅速なご指摘と寛容なご対応に感謝するとともに、今後も文学賞への盗作投稿には厳正に対処してまいります」と発表した。
過去には、漫画賞でも盗作騒動や、設定が別の作品と似ているなど理由で賞を取り消された例がいくつもある。2022年には外務省が主催する「第15回日本国際漫画賞」の入賞作品が他の作品と酷似していると判明し、賞が取り消された。2011年に開催された「第18回スクウェア・エニックス マンガ大賞」では、特別大賞の受賞が取り消される騒動に発展している。
また、ある少年漫画誌の読者投稿コーナーでは、大きく掲載された投稿作品があろうことか同じ雑誌に掲載されたギャグ漫画からの盗作であると発覚、編集部が謝罪したケースもあった。
■完全に見抜くためにはAIの頭脳を頼る?
そして、近年増加しているのが生成AIやChatGPTを使った作品である。2023年、月刊誌「クラークスワールド・マガジン」はAIを使った作品があまりに多いことを問題視し、投稿の受け付けを一時停止する騒動に発展したことは記憶に新しい。こうした賞が純粋な新人の投稿の場ではなく、AIを悪用した金稼ぎの場になっていることを、主催者は嘆いていた。
結局のところ、盗作を100%なくすことは現状では不可能に近く、賞が発表されてから部外者の指摘があって発覚するケースがほとんどである。ネットではこういった受賞作を常に注視している人もいる。世間を騒がせたSTAP細胞の論文捏造事件などもそうだが、いわば、人々の集合知によって不正行為は発覚するのだ。
こういった著しい技術革新のもと、盗作を見抜くための知恵を出版社側も練りに練っている状況にある。また、不正行為が問題視される一方で、不正を行っていないクリエイターに対する中傷行為もまた、後を絶たない。盗作にまつわる新たな問題が露呈しつつある状況にあるが、完全に見抜くためにはAIの頭脳を頼るしかないのだろうか。それとも人の審美眼の方が正確なのか。今なお、なくならない盗作とのいたちごっこは続いている。