まんだらけ「史上最大の発見」水木しげる、デビュー前に描いた幻の紙芝居が550万円で落札ーー歴史的意義

『人鯨』第1巻の扉絵。原画をそのまま紙芝居に使用していたため、縁に傷みがみられ、表面にキズも多い。しかし、それゆえ年月を経たリアリティを感じられる。画像提供=まんだらけ

■水木しげるの幻の紙芝居

 9月7日、ヴィンテージコミックや漫画原画などを扱う中古書店「まんだらけ」のオークションに、『ゲゲゲの鬼太郎』などで知られる漫画家の水木しげるがデビュー前に描いたとされる紙芝居『人鯨』が出品。そのうちの第2巻全10枚セットは最高額となる550万円で落札された。

最高額となる550万円で落札された第2巻全10枚セット。まんだらけの公式Webサイトより

 水木の作品リストによると、『人鯨』は全20巻。このたびオークションに出品されたのは、1956年に水木が“武良茂鉄”名義で執筆したもので、第1巻の扉絵1枚、第2巻全10枚、第18巻の5枚目の合計3種類だった。

 落札額は、第1巻の扉絵1枚が195万円、第2巻全10枚が550万円、第18巻の5枚目が190万円となった。なお、最低入札価格は第1巻の扉絵1枚が100万円、第2巻全10枚が250万円、第18巻の5枚目が20万から。

190万円で落札された第18巻の5枚目。まんだらけの公式Webサイトより

 水木が紙芝居作家だったことは、ファンの間では周知の事実である。1951~57年の6年間にわたって活動し、手掛けたタイトルは作品リストなどで知られていた。しかし、戦後の混乱期の制作ゆえに散逸してしまい、実物が出てきたことはこれまでになく、幻とされていた。

 今回の出品を「まんだらけ」は「まんだらけ史上最大の発見」と語り、原画類の鑑定も手掛ける古川益三会長が「夢にまで見た!」とコメントしていたことから、ファンの間で注目が集まっていた。

 なお、落札者の経歴などについては不明。今回の高額落札に対し、水木ファンの間では様々な意見が出ている。前例のない品物なだけに、今回の落札額が「高い」と感じるか、「安い」と感じるかは人それぞれだが、筆者はもっと高額になってもおかしくなかったのではと感じた。

 勝手なお願いを書くとすれば、『人鯨』を落札した方は、ぜひ品物を公開・展示する機会を設けてほしい。歴史的な逸品を、期間限定でもいいので見れるようにしてほしいと願わずにはいられないのだが……どうだろうか。

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