『僕のヒーローアカデミア』涙なしには読めない、オールマイトの教育論とデクとの師弟エピソードを振り返る
「週刊少年ジャンプ」での連載が晴れて完結を迎え、アニメ7期はもちろん、劇場版も大ヒット上映中の『僕のヒーローアカデミア』。その魅力は「個性」と呼ばれる特殊能力を用いたバトルシーンと、ヒーローに憧れ目指す主人公たちの熱い人間ドラマ。特に、ヒーローへの夢を諦めきれず「個性がなくてもヒーローになれるか」と問うたデクこと緑谷出久と、個性「ワン・フォー・オール」を継承させることにしたオールマイトの師弟関係は胸アツだ。本稿では作中に散らばる2人の師弟エピソードを紹介したい。
「君はヒーローになれる」数々の名ゼリフがデクを鼓舞し、人生を激変させる
『僕のヒーローアカデミア』は「人は生まれながらにして平等じゃない」というなかなか絶望感のある語りで始まる作品だ。物語の舞台は、総人口の約8割が何らかの超人能力“個性”を持つ世界。強力な個性を武器にしたヒーローという職業が脚光を浴びる世界線では、デクのように個性がないこと自体が大きなコンプレックスとなる。デクは個性のない体質であることが病院の診察で分かった際、彼は母親から「ごめんね」と言われてしまう。この一言は、本人だけでなく読者にとってもかなり堪えるものがある。
家族だからこそ励ましつつ、1%でもヒーローになれる可能性を示してあげれば良いのに、と感じてしまう。というのも、謝られてしまった時点で、クラスメイトや幼馴染同様、母親でさえも彼を「素質がない子供」と思っていることが判明するからだ。親心なのかもしれないが、毎回このシーンを読むたびにデクのショックの大きさを想像して切なくなってしまう。そして、本気でくじけかけているデクを鼓舞し、ヒーローの登竜門・雄英校ヒーロー科への入学に漕ぎつけさせた人物こそ、他でもないオールマイトだったのだ。
オールマイトは当初、自身の身体が満身創痍で活動限界がわずか3時間ほどとなってしまっている現状を伝え、デクにヒーローという職業に期待を持たせないよう務める。しかし、爆豪勝己が街中でヴィランに襲われ、思わず助けようと行動に出た彼を見て、ヒーローの素質に気付き方向転換。なんと「君はヒーローになれる」と断言し、応援し出すのだ。
以降、オールマイトは師匠としてデクを全面サポート。雄英校ヒーロー科受験のための修行の際には「目指せ合格アメリカンドリームプラン」を考案し、スパルタ特訓の末受験に臨むデクには「これは君自身が勝ち取った力だ」と鼓舞し試験に送り出す。さらに、合格発表の映像では「来いよ緑谷少年! 雄英が君のヒーローアカデミアだ!」など様々な名ゼリフを放っていく。
今にもくじけそうになっている人間をたち直らせて鼓舞し、最終的に成功を掴み取らせる。オールマイトの言動は、まさにプロフェッショナルで、デクの試験合格も彼のヒーロー教育の賜物と言えるだろう。