TBSアナを辞めて、なぜベンチャーへ? 国山ハセンに聞く、キャリアチェンジと“対話力”の重要性

国山ハセンインタビュー

■対話力の4つのステップ

ーー本書では対話を4つのステップ(アイスブレイク、アイドリング、ドライブ、トップスピード)に分けて解説していました。一つ一つに分解すると、苦手な人も自分でもできるような気になるように思いました。それぞれのポイントについて教えてください。 

国山:最初のステップのアイスブレイクでは、まさしくその挨拶と笑顔が重要になります。初めて会う方との商談などでは、名刺交換した際に微妙な間ができるじゃないですか。そこでいかにカジュアルな雰囲気にできるかがポイントです。特に番組収録の場合は出演者にリラックスしてもらいたいということがあります。相手がどういう表情なのか、どういうテンションなのか。それを観察しながら、簡単な雑談をしてみる。好奇心を持ちながら、相手に問いをぶつけてみるんです。その質問は本当になんでもいいんですよね。このアイスブレークは全体の15・20%ほどですが、ギアを入れるまでのストロークになるので、とても大切にしている部分です。 

対話の中では表情豊かな「喜『驚』哀楽」がポイントであると言う

ーー次のアイドリングは、相手の心をほぐしていく段階でした。ここでは聞き手になることが大事だそうですね。いい聞き手になるためのポイントはありますか。 

国山:単純な質問をどんどんして、ちょっとずつギアを上げていくようなイメージです。まだ前半はかたくなってしまっていることも多いので、変な緊張感をなくしていくんですね。 

 番組収録で話を聞く時に意識しているのは、質問の半分は台本、残りはアドリブにすることです。聞くことをガチガチに決めてしまうと、予定調和になってしまう。もちろん構成や聞きたいことを考えてはいるんですけど、基本的には相手にそれを投げながらも、面白いワードや熱量のあるポイントを見つけて、掘り下げていきます。いかにそこを逃がさないようにして、盛り上げていくのかが重要です。 

ーー次のドライブでは、相手の発話のエンジンをさらに温めていく段階と書かれています。そのためにはリアクションが大事とのことですが、どのようなポイントがあるのでしょう。 

国山:大きなリアクションを示すようにします。そのほうが相手も嬉しいですよね。話している内容に興味・関心があるということを素直に伝えるポーズになります。そこで大事なのは、表情豊かな「喜『驚』哀楽」なんです。「驚」くとしたのは、その発見や気づきに驚いたことをしっかりと相手に提示する。そうすると、相手はより詳しく話をしてくれると思います。 

自分の気持ちをさらけだすことがインタビューのテクニックの一つ

ーーそして最後のトップスピードでは「本音の交換」ができるかどうかが、最も重要になってくるとのことでした。 

国山:最終的には、自分も相手も学びを持ち帰ることが一つのゴールだと思います。そうすることで、誰とでも信頼を築けることに繋がるんです。 

 人と対話をすることで、本当に多種多様な知見が得られます。ネットで検索しただけの情報とは違って、直接自分が得た一次情報になる。そういう意味でも、本音を引き出せると、多くの学びや気づきが得られると思います。 

 そこで大事なのは、本音を「交換」することだと考えています。つまり、相手からいかに話を引き出すかだけにフォーカスしてしまうと、実はうまくいかないんです。アナウンサー時代から意識しているインタビューのテクニックなんですが、まずは自分のことをさらけだすんですね。「実はこんなことで悩んでいるんですけど、どうしたらいいでしょうか」などと聞いてみる。するとそれに対するリアクションとして、本音で話をしてくれることが多いです。 

ーー本書ではテレビ局や芸能界の先輩からのエピソードが紹介されていて興味深かったのですが、特に思い出深いものはありますか。 

国山:「おわりに」に書きましたが、TBSの大先輩・長峰由紀アナウンサーからいただいた「生きた言葉を探してください」という言葉を大切にしています。 

 長峰さんは日曜お昼のニュース番組「JNNニュース」で一緒に担当させてもらいました。僕はまだ2年目の新人でガチガチに緊張していたんです。多くの人に見られている番組ですし、ストレートニュースなのでミスは許されなかった。それでも自分はミスが多かった。そんな時にいろいろなアドバイスをいただきました。 

 私が番組を卒業するタイミングでお手紙をいただいて、一言だけ「生きた言葉を探してください」とありました。私はそれをアナウンサーの心構えだと受け取りました。アナウンサーとして大切にしなければいけないこと。もっと言えば、人としてずっとこれから大切にしていきたいこと。自分で足を運んで、目で見て聞いて感じたことを伝えないといけない。表面的なことではなくて、ちゃんと物事の背景を捉えて、想いをのせて伝えるということだと解釈しています。 

ーー先ほどの「本音」ともかかわってくるのでしょうか。 

国山:そうですね。長峰さんに原稿読みの研修をお願いしたことがありました。僕は音だけを捉えたらきれいに正しく発音できていたはずでした。でも「今の一行は背景を捉えて読めていますか」と指摘されたことを今も鮮明に覚えています。本当の意味でその言葉を理解できているかということでした。 

 「今現場では〜が起きています」と一行を読み上げるだけでも、自分の想いが込められているかどうかで伝わり方が違います。放送では、取材した1/10も放送できないことがほとんどなんですが、10のものをのせて1を伝えるということはできる。つまり、本音が伝わるんですね。それが「生きた言葉」ということなのかなと思っています。

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