映画版公開迫る『箱男』 安部公房が描いた「見る/見られる」の物語が“今こそ”恐ろしい理由
これは、本作が発表された1970年代よりも、街中(まちじゅう)に監視カメラが設置され、誰もが気軽にスマホで写真を撮り、SNSなどで情報を発信できるようになった現代の方が、読み手にリアルに伝わってくる“怖い”感覚だといえるかもしれない。そう、いま本稿を読んでいるあなたも、知らず知らずのうちに“誰か”に覗かれているかもしれないのだ。
いずれにせよ、そんな「見る/見られる」という行為が深化したいまこそ、この『箱男』という作品は、あらためて読まれ、観られるべき作品だといえるだろう。「読んでから見るか、見てから読むか」とは、70年代末から80年代にかけて席巻した角川映画(角川文庫)の名コピーだが、あなたがまだ原作の『箱男』を未読のようなら、まずは映画館という「箱」の中で世界を覗き見たのち、小説の方を手に取ってみるといいのではないだろうか。