『らんま1/2』『YAIBA』『ドラゴンボール』1980~90年代の名作漫画、続々とアニメ化される理由は?

■次々とあの名作漫画が再びアニメになる

©高橋留美子・小学館/「らんま1/2」製作委員会

 1980~90年代は日本の漫画・アニメの黄金期といえる。「週刊少年ジャンプ」が新聞の発行部数を超えた時代であり、漫画とアニメが子どもたちにとって最大の娯楽であった。そんな時代に放送された名作アニメが、相次いで“再アニメ化”されている。それは完全新作であったり、続編であったり、リニューアルであったりと様々だ。

  今年に入ってから製作が決まった代表例を挙げるだけでも、1994年に放送開始のCLAMPの名作『魔法騎士レイアース』、1989年放送開始の『らんま1/2』、1993年放送開始の『YAIBA』、そして1996年放送開始の『地獄先生ぬ~べ~』までもが、新作アニメの製作が決まった。また、今年の10月には鳥山明がキャラクターデザインなどで関わった『ドラゴンボールDAIMA』の放送が開始される。

 いったいなぜ、再アニメ化が進むのだろうか。その理由を検証してみよう。おそらく最大の理由と考えられるのは、とにかくネットでバズりやすく、話題になりやすいということである。

  XなどのSNSを使いこなしているのは、まさに子ども時代にそれらのアニメをリアルタイムで視聴していた30~40代である。そういった層に響きやすいため、アニメ化の情報が流れると瞬く間に拡散される。その時点で既に宣伝効果は抜群であり、記者や編集者も同年代の人が多いため、目に留まりやすく、ネットニュースにもなりやすい。情報が広がるスピードが桁違いであり、これは製作側にとって非常に好都合というわけである。

■圧倒的なメディアミックスのしやすさ

  また、過去にヒットした作品であるため、既にある程度のファンがついている。これはメディアミックスを進めるうえで有利だ。特に、タイアップやグッズ展開の際に、製作側の営業が各社を回りやすいというメリットも多いようだ。「あの名作が再びアニメ化されるんです」と説明すれば、企業側の担当者にも1人や2人、作品を知っている人がいる。こうなれば話がスムーズに進みやすく、タイアップがしやすいというわけだ。

  そして、何と言っても新しいファンを獲得したいという思惑も大きいだろう。過去の名作アニメはセル画で描かれている。昔からのファンにとってはセル画のタッチが懐かしく、かえって魅力的に映るのだが、デジタルの作画に見慣れている10代以下の層はレトロっぽく感じてしまうのが実情のようだ。そこで、現代的な絵柄でリニューアルすることで、新たなファンの獲得に動こうというわけである。

  出版社にとっても、漫画家にとってもアニメ化は好都合である。単行本は間違いなく売れるし、重版がかかったり、新装版が発売されたりする。メリットがすこぶる大きく、断る理由はないといわれるほどである。

■再アニメ化はプレッシャーも大きい

  最近、再アニメ化作品が多いのではないか、と言われることがある。だが、アニメは年間非常に多くの本数が放送されており、その全体の数からみれば決して多いというわけではない。だが、既に述べたように、SNSやネットニュースで圧倒的に取り上げられやすく、話題にされやすい。そのため、再アニメ化作品が多いように錯覚してしまうのである。それが、再アニメ化作品が持つパワーというものだろう。

  しかしながら、再アニメ化作品はどうしても過去の作品と比べられる運命にある。当然だろう。過去の作品が名作だったからこそ、再アニメ化されるのだから。それゆえ、製作側のプレッシャーも相当なものであるだろうし、前作を上回る作品を作ろうという熱意をもつスタッフも多い。再アニメ化作品は、往年のファンにとっても、新しいファンにとっても魅力的でなければならない。そう考えると、相当に大変なプロジェクトであると言えるだろう。

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