「歌舞伎町はSNSによって熱いコンテンツになってしまった」 佐々木チワワが語る、コロナ前後の歌舞伎町の変化
歌舞伎町と六本木はここ数年ですごく近くなっている
――本書の中では主に歌舞伎町について取り上げていましたが、佐々木さんご自身は今後違うエリアを研究してみたいという気持ちはありますか。佐々木:歌舞伎町と六本木はここ数年ですごく近くなっていて、ラウンジ嬢がホストに貢ぐし、ホストがラウンジ嬢とギャラ飲みに行くなど、いろいろな循環があります。ですから港区の文化と比べてみたい気持ちはありますね。興味はあるのですが、私自身が歌舞伎町に帰って飲みたくなるだろうなとは思います。やはりホームタウンなので、他に取材に行っても疲れて戻ってきちゃうことはあると思いますね。
――現時点で港区の文化は歌舞伎町と違うと感じますか?
佐々木:六本木は歌舞伎町をうっすら見下しているし、歌舞伎町はうっすら六本木を見下しているような節はある。そこも含めてサルカニ合戦みたいでいいなという気持ちで見ています(笑)。
――初めて歌舞伎町のことを調べ始めたのは大学生の時と聞きました。ご自身の年齢が上がるにつれて歌舞伎町を見る目線が変わるということは?
佐々木:めちゃくちゃ変わりましたね。それに、まずホストクラブに私よりも年下の子がいることがもう驚きです。やはり今は、自分が不安定だった頃よりもメタ認知が加速してしまっているし、当事者ではあるけれど段々とまともになってきてしまいました。そこのバランスもあるし、自分は本当に最前線にいられてるんだろうかみたいな不安はありますね。青春時代にここにいて将来の不安もなく無敵だった自分に比べると、もうそろそろ20代半ばに突入するので、ちょっとは冷静になりますね(笑)。
歌舞伎町では、だいたい25を超えるとババアと言われ始めますから。「20後半にもなってホストにハマっているババア無理」とか思っていた年齢に自分もなっていくと思うと、本当にいつ私は卒業できるんだろうと。そう思いつつも、自分が持っている視野だけじゃない歌舞伎町を見れるようになったとは思いますね。
――「いつ卒業するんだろう」みたいな話も出ましたが、現時点で何か具体的に考えていることはありますか。
佐々木:実は就活もしてみてはいるのですが、エントリーシートに何も書けなくて。学生時代に力を入れたことと言われてもエントリーシートに書けないようなことにしか力を入れていないので、どうしようという感じです。例文には「バイトリーダー」とか書いてあるけれど、ホストに金使って本出したたのは学チカ(学生時代に力を入れたこと)なのかな……みたいな(笑)。大学は3月に卒業しますが、今年一年間はとりあえずフリーでやるつもりです。学生という肩書きを失った今、私は歌舞伎町で何を書きたいのかを探しながらの一年になると思います。
――では、この一年の間にまたご執筆されるということですね。
佐々木:連載はこれからも続きますし、歌舞伎町には相変わらず飲みに行くので書くでしょうね。その中で特に社会学的に見たい側面として、ホストで働くゲイの男性の話や、女性ホストが出てきて性を売る業界ゆえのジェンダーディスプレイみたいなところには関心を寄せています。後はホスト1000人くらいにアンケートを取って、学歴とかセカンドキャリアとか、あとはスマホのスクリーンショットを分析して、売上いくらのホストが何時間LINEを触っているのかなどのデータを分析するということとか、そういう研究はしてみたいですね。そして、この実績を学チカにできればいいなと思っています(笑)。
■書籍情報
『ホスト!立ちんぼ!トー横! オーバードーズな人たち ~慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間~』
著者:佐々木チワワ
価格:1650円
発売日:2月28日
出版社:講談社