映画『変な家』とは異なる没入感も いま改めて読むべき小説『変な家』の魅力とは?

 それ以前にこの“ノンフィクション風小説”を読んでいると、果たしてこれが本当に小説(=フィクション)なのかどうなのか混乱してくる。それはやはり家というものがあまりにも身近なものであり、主観とはいえ著者の感情は排され、非常にフラットな文体で綴られているからだ。こういったポイントが、映画版とは圧倒的に違う。扱っているモチーフこそ同じだが、まったく別の作品だという印象を受ける人がいてもおかしくない。

 ここでは物語の具体的なところにまでは言及してこなかった。主人公らが間取り図を手がかりに、客観的事実から考察し、またときには主観的に想像を膨らませ、「変な家」の成り立ちに肉薄していくとだけ記しておこう。映画版の尺は110分だが、小説版も早い人ならそれくらいで読み切ってしまうと思う。「読んでから見るか、見てから読むか」という言葉があるが、映画版に触れた人も、そうでない人も、いますぐに読むべきである。映画と大きく印象が異なるのは述べてきたとおりだし、本書に記されていることは他人事ではないのだから。読み終えてすぐ、私は自宅の間取り図を引っ張り出した。

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