『LINEマンガ』代表・髙橋将峰が見据える“未来”「 クリエイター・ファーストとwebtoonが世界への近道に」

  2013年にサービスをローンチ、昨年10周年を迎えたLINEマンガ。累計ダウンロード数は4000万超と国内マンガアプリでは1位を記録するなど、相変わらずの強さを誇る。

テレビアニメ化が決定した『先輩はおとこのこ』。©pom・JOYNET/LINE Digital Frontier・「先輩はおとこのこ」製作委員会

  しかも最近では縦読みマンガwebtoon(ウェブトゥーン)で、オリジナルのヒット作を連発、『先輩はおとこのこ』がフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて今年テレビアニメ化されるなど、作品の映像化でも勢いを見せている。

  次の10年を走りはじめたLINEマンガは、これからどこを目指すのか? グローバル・マーケットに向けた自信と確信とは? LINEマンガを運営するLINE Digital Frontierの代表取締役社長、髙橋将峰氏に聞いた。

スマホゲームと似た、マンガアプリの立ち位置

――昨年、LINEマンガは10周年をむかえました。節目の年は、どんな1年でしたか?

髙橋:「この10年で本当に状況が変わったな」とあらためて感じる1年でしたね。スマホに最適化されたフルカラー&縦スクロールのwebtoon作品を中心にヒット作が多々生まれたのは、まさにそれです。

国内累計閲覧数4億ビューを突破するなど高い人気を誇っている『入学傭兵』

  トップクラスの人気を誇る『入学傭兵』(原作:YC/作画:rakhyun)が国内累計閲覧数4億ビューを突破(2024年1月時点)。2023年9月の月間販売額は1億8000万円を超えるほどになっています。またLINEマンガオリジナル作品で日本生まれの『先輩はおとこのこ』(ぽむ)はフジテレビ“ノイタミナ”ほかにてテレビアニメ化が決まっています。かつては「アプリでマンガが読まれるのか?」「横読みになれた日本の読者がwebtoonを読むのか?」とネガティブな意見が溢れていたのが、遠い昔のようです。

ーー素朴な疑問ですが、なぜ「アプリでマンガが読まれる」ようになり、「webtoonも受け入れられた」のでしょうか?

髙橋:まず前者の「アプリでマンガが読まれるか」に関しては、当初から心配していませんでした。10年前の当時からマンガアプリはすでにいくつか存在していましたからね。ただ無料の広告モデルばかりで、購買から決済までアプリの中で完結するLINEマンガのようなものはなかった。この使い勝手の良さ、大きな意味でのUI(ユーザーインターフェイス)が優れ、早くから使っていただいたことで先行者優位が働いた面はあると思います。

   LINEというコミュニケーションツールが先に浸透していたことも、大きかったと思います。そもそもマンガって、コミュニケーションの元ネタとなる側面がありましたよね。我々の世代だと、月曜日になれば「今日のジャンプ、読んだ?」と教室で語り合い、水曜日には「マガジンのさ…」「今回のサンデーで…」とか(笑)。

  LINEを介して、そんなマンガの話題や回し読みに似たコミュニケーションがしやすかった。普及の後押しに確実になりましたね。

――そうした土壌ができたうえに、webtoonが自然に入ってきて、驚くほどハマった?

横読み漫画に慣れている日本に縦読み漫画のwebtoonが受け入れられるのか当初は不安があったと話す髙橋氏。

髙橋:そうですね。この10年の間でも、韓国NAVER WEBTOONですでに普及していたwebtoonを2018年からLINEマンガに移植、日本市場に投入したのは、最も大きなターニングポイントだったと思います。日本は世界に冠たるマンガ大国、読み手も描き手も成熟していて、右開きでめくって読む「横読み」が当たり前に根付いていました。

 それだけに、スマホを縦スクロールして、シームレスに続くwebtoonに「アレルギーのような拒絶反応があるのではないか」「表現が制限されるのではないか」と不安はありました。ただ実際にサービスインすると、すぐに多くの読者の方々に歓迎されました。

――今やwebtoonがLINEマンガを牽引しているコンテンツになっています。

髙橋:「マンガはこういうフォーマットでなければダメだ」「横読みでなかえれば豊かな表現できない」といったこだわりが、読み手の方々には思ったより強くなかったのではないでしょうか。スマホに最適化されたフォーマットだけに、むしろ横書きのマンガよりも読みやすかった方も少なくないと思います。

 スナックのようにサクッと気楽に楽しめる意味で“スナックカルチャー”と呼ばれますが、むしろTik Tokなどショート動画と同じ感覚で受けいれられていますからね。

――ひと昔前、インターネットに触れるならPCが当たり前だった頃、「ケータイで動画なんて観ない」「スマホで買い物なんてしない」と思われていたのと似ているのかもしれません。

髙橋:現在人気を誇るスマホゲームが出始めたときも、「こんなものはゲームじゃない」なんて声が結構あがりましたよね。しかしスマホという身近なデバイスで触れられる気軽さから、これまでゲームをしてこなかった若い女性などがプレイしはじめました。

  そもそものゲームユーザーをとりあうのではなく、スマホゲームがゲーム市場全体のパイを大きくし、活性化させたのです。家庭用ゲーム機のユーザーをとりあうこともなかった。似た関係性が、既存の出版社とwebtoonの間にもある。さらにwebtoonの場合は、新たに広げた市場が、グローバル市場に直結していることにこそ、大きな価値があると考えています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「出版キーパーソン」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる