『LINEマンガ』代表・髙橋将峰が見据える“未来”「 クリエイター・ファーストとwebtoonが世界への近道に」
グローバルで毎月8500万人の読者がいる凄み
――webtoonが、グローバル市場に直結していると。
髙橋:さきほど申したように、日本はマンガ文化が成熟している先進国です。一方で海外では、右開き横読みで複雑なコマ割りに慣れていない人がほとんど。もともと日本のカルチャーが好きな方や、マンガ好きの方はともかく、「マンガは読みにくい」と感じていた人はとても多いのです。仮に同じ作品でもアニメほど、マンガがグローバル市場で広がらないハードルになっていたわけです。
しかし、そうしたハードルが、webtoonにはない。シンプルな縦スクロールで複雑なコマ割りもありません。どこからどう読めばと迷うことなく、マンガを楽しんでいただけます。
――なるほど。スマホゲームの新規ユーザーがゲーム市場全体を伸ばしたように、webtoonが海外の膨大な新規ユーザーにリーチして、マンガのグローバル市場全体を伸ばすことになる?
髙橋:おっしゃるとおりです。いま私たちLINEマンガのサービスのグローバルなMAU(月間利用人数)は8500万人に登ります。
とくにwebtoonは北米やインドネシアなどのアジア各国でユーザー数を伸ばしています。もしかしたらこれまでマンガに触れなかった層に、マンガとも思われず、新しいスナックカルチャーのひとつとして極々自然に触れていただけているのではないでしょうか。
――作家からの目線でいっても、グローバルな読者の方々にリーチするチャンスが増えるというか、開かれているともいえますね。
髙橋:そうですね。これまでは大手出版社のマンガ雑誌に投稿して、連載を勝ち取り、人気が出たらIPとしてアニメ化やドラマ・映画化を果たす…といったエコシステムがありました。とても成熟していますが、完成されすぎていて、狭き門になっています。
しかし、webtoonが世界中で受けいれられた結果、また新しいルートで作品がグローバル市場で受け入れられ、新たなIPとして愛され、育つ可能性がうんとひろがった実感があります。また、作家さんとともに世界への扉をどんどん開いていきたい思いが強い。
――韓国のwebtoonからはすでにゾンビホラードラマ『今、私たちの学校は…』や、世界190ヵ国で同時配信された映画『モラルセンス』など、Netflixなどで実写映像化され、グローバルで人気IPになっているものが現れていますね。
髙橋:はい。似たようなルートで、日本発のwebtoon原作のIPを輩出していきたい。繰り返しになりますが、日本は本当に成熟したマンガ大国です。すばらしい作家さんと、アイデアがたくさんある。LINEマンガのwebtoonを介して、世界の方々に喜んでいただくチャンスは多いにあると確信しています。
それに、日本の強みといえばアニメもあります。webtoon原作ですでにグローバルに人気を博す作品が生まれ、それがアニメ化されたなら今のマンガ原作のアニメ化よりももっと大きなインパクトが出せると考えています。アニメから作品に入った方が、「原作も読んでみたい」とwebtoonに触れる可能性も、横読みマンガよりは高いでしょう。キャラクターグッズや二次展開も含めて、スムーズに大きな波及効果につながることが期待できます。
――昨年末公開された『ゴジラ-1.0』が世界で受け入れられて、アカデミー賞まで取ったように、webtoonから世界に愛されるIPを生み出されることが期待できると。
髙橋:そうですね。言い方を変えると、これまでのルートではゴジラという素晴らしく強いIPですら、グローバルで本当に浸透していくのには時間がかった。たとえば、日本では絶大な人気を誇り、私も大好きな『ガンダム』ですらグローバルの視点ではまだまだ大きな可能性を感じます。しかし、webtoonというグローバルなプラットフォームで、原作マンガをまず楽しんでもらい、作品が浸透すれば、これまでとは違うスピードとコスト感で、グローバルIPが生まれる可能性があります。
――当たり前のことですが、そうなると作品の質がより問われる。新しい才能がどんどんwebtoonに参入してもらう必要もありますよね。
髙橋:そのとおりです。だからこそ作品づくりにおいては、私たちはずっと「クリエイター・ファースト」の立場をとっています。LINEマンガにとって、また日本の素晴らしいマンガ文化をさらに花咲かせるためのはずせない要素だと確信しています。
髙橋将峰氏プロフィール
2006年、ヤフー株式会社に入社。その後、株式会社イーブックイニシアティブジャパン代表取締役社長に就任。2023年7月にはLINE Digital Frontier株式会社代表取締役社長CEOにも就任。
<後編に続きます>