『PSYCHO-PASS サイコパス』10周年記念展開催や記念映画のノベライズ刊行で気になる“その先”
『PSYCHO-PASS サイコパス』の小説群にはノベライズ以外に外伝小説やスピンオフ小説もあって、『PSYCHO-PASS サイコパス』の世界についてより深く探求できる。高羽彩による『PSYCHO-PASS サイコパス0 名前のない怪物』は、監視官だった狡噛が猟犬に変わるきっかけとなった「標本事件」の真相が描かれ、狡噛や1期の物語への理解を深められる。
吉上亮によるスピンオフ小説『PSYCHO-PASS ASYLUM1』には1期に登場するハッカーのチェ・グソンが槙島聖護に出会うまでの物語「無窮花」、『ASYLUM2』には第1期から執行官として登場した六合塚弥生がミュージシャンだった時代の人間関係が絡んだ事件が描かれた「About a Girl」が入っている。キャラのファンなら読んでおきたいスピンオフだ。
2015年から17年にかけて4冊出た『PSYCHO-PASS GENESIS』は、1期で退場となりながら今も高い人気を持つベテラン執行官の征陸智己が、まだ警視庁の刑事だった時代を描きつつ、「シビュラシステム」がだんだんと浸透していった状況を見せている。そこでは、法が裁けない悪を斬る一方で、明らかな悪を見落とすこともある「シビュラシステム」が持つ矛盾が指摘されている。
最新作まで朱が半ばライフワークとして抱え続ける疑問が、実はシリーズを通して問われ続ける問題であることがスピンオフ小説群から見えてくる。こうなるとやはり、朱と「シビュラシステム」の決着までは描かれて欲しいところだ。信じたいのはもちろん人間の勝利だが……。