【漫画】完璧なアイドルの正体は人ではなかった? 心温まるSF漫画『まりん信じられる』

【漫画】完璧なアイドルの正体は?

 歌もダンスも完璧。まるでロボットのようなアイドルは、実は本当にロボットなのかもしれない。そして、自分の推しがロボットだったとしたら、これまで通りに推すことはできるのだろうか。pixivなどに投稿された『まりん信じられる』は、そんな疑問の回答を示す心温まるSF漫画だ。

 アイドル愛、SF愛が詰まった本作を手掛けた伊田チヨ子さん(@chiyocooooo73)に制作の裏側など話を聞いた。(望月悠木)

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『まりん信じられる』(伊田チヨ子)

まりんのモデルは“アイドルサイボーグ”


——本作を制作した経緯を教えてください。

伊田チヨ子(以下、伊田):本作は2021年に「青騎士」(KADOKAWA)で連載していたオムニバス形式の漫画の第1話です。当時は『ディジーレコード0014』というタイトルだったのですが、今年初めにいろいろな権利が私に移ったため、せっかくなので多くの人に見てもらいたいと思い、SNSなどに投稿しました。

――今回投稿された『まりん信じられる』は、SF要素と推し活を融合した内容でしたね。

伊田:第1話、つまり『まりん信じられる』に関しては、「まずは読者に前知識がなくても読んでもらえる現代日本の物語にしよう」と思い、こういった切り口になりました。ですので、第1話以降は別の時代や国に舞台を移した物語になります。

――連載だから冒頭とラストに部屋を掃除するロボットが登場したのですね。

伊田:そうです。連載作品として、常に冒頭とラストにお掃除ロボットが登場する日常が描かれる形式にしています。「彼が毎回オムニバス映像を視聴していくと、徐々に行動に変化が現れる」という狙いです。とはいえ、今回の『まりん信じられる』のみを読んでもその意図は伝わらないので、今後ほかの物語を公開していく中で、彼の変化にも注目してほしいです。

――実在する学者兼作家のアイザック・アシモフが提唱したロボット工学三原則も出てきましたが、本作の設定はどのように決めていきましたか?

伊田:私は古典的な設定や、伝統的な物語の型が好きなので、そういったものから換骨奪胎をして、自分なりの解釈や設定を肉付けしていく作品作りを心がけています。本作も「アシモフの短編集『わたしはロボット』(東京創元社)の中で提唱されたロボット工学三原則という古典的な設定を、現代アイドル文化と融合させたらどうかな?」と考えました。

――なぜアイドル文化を選んだのですか?

伊田:アイドル文化、中でも「ハロー!プロジェクト」が好きなので、「SFに絡めて描いたら面白そうだな」と考えたことが影響です。また、元Juice=Juiceの宮本佳林さんがデビュー当初、“アイドルサイボーグ”という異名をとっていて、ファン文化から生まれたこの異名通り、「宮本さんのような完璧なアイドルが本当にサイボーグやロボットだったら?」とどんどん妄想を膨らませ、作品に落とし込んでいきました。

――まりんのキャラデザなども宮本さんの影響を受けているのでしょうか。

伊田:そうです。まりんのビジュアルのボブヘア、ステージ衣装の紫はJuice=Juice時代の宮本さんをイメージしています。

――ちなみにロボットと人間を描き分けるうえで意識したこともありましたか?

伊田:まりんの外見や表情をロボットらしく描くことはしませんでした。それは「アイドルが大好きなオタクのスミレが作ったのだから、まりんはもう完璧なビジュアル!」という意味もあります。また、デザインという点では、まりんがステージ衣装の時に装着している舞台装置と連動するメカハイヒールが気に入っているので、注目してもらえれば。

メカバレはフェチズム

――ストーリーはどのように組み立てていきましたか?

伊田:「まりんの正体がロボットだとバレてしまうが、ファンは誰1人それを世間にバラさなかった」という終盤の1シーンを描きたい気持ちが、まず最初にありました。そこから「なぜバレたのか?」「そこに至るまでまりんがどんな状況に陥るのか?」と逆算してストーリーを作りました。1話完結形式なので、読み手がカタルシスを得られるように意識しています。

――まりんが後方の客をズームカメラで見ようとしたりなど、ポップさも散りばめられていましたね?

伊田:コンサートで「スタンドも後ろの席まで見えてるよ!」というアーティストの定番の煽りを聞くたびに、「本当でござるか〜?」とドームの天空席で考えたりしていました(笑)。また、「実際アーティストがズームカメラで見ていたら面白いな」と思い、あの描写を入れました。私は自分が経験したことや“界隈あるある”をジョークにすることが好きなので、「わかる人にわかってもらえたら嬉しいな」とポップさを散りばめています。

――ライブシーンでいえば、背中から羽が出て客を助けるシーンもインパクト十分でしたね。

伊田:オタクのフェチズムのジャンルのひとつに、ロボットであることを隠していたのに正体がバレてしまう“メカバレ”があります。「お客さんを助けるシーンはメカバレ演出を盛大に描こう!」と思い、「機械の翼が本人の意思とは関係なく生えてしまう」「中身のメカが剥き出しになってしまう」ということを徹底しました。その徹底加減が功を奏して、「ボロボロになってまでファンを助けるまりんが尊い」とキュンとしてもらえる場面になったと思っています。

――今後も他のエピソードを掲載していく予定ですか?

伊田:はい。先述した通り、連載時は『ディジーレコード0014』というタイトルでしたが、今回再掲するにあたって『伊田チヨ子SF劇場シリーズ 』というタイトルに変え、他のエピソードもpixivや漫画サイトで公開していく予定です。よろしければ伊田チヨ子のSNSをチェックしてください。少しお時間はかかりますが、全話順次公開予定です!

――漫画家としての展望も教えてください。

伊田:現在商業連載している『東京ステッキガール』(講談社)のような、近代日本の文化風俗を色濃く描く作品も描き続けたいですが、その一方でファンタジー、学園もの、SFなども手広く描いていきたいです。一昨年、東京から湘南に移住したので、湘南の歴史的な事柄や現代カルチャーを扱った作品も描いてみたいですね。これはフィクションでも、エッセイでも扱ってみたい題材です。基本的に編集さんにリクエストされたら「よし! じゃあやってみるか!」となる性格なので、これからも新しいことにどんどん挑戦していきたいです!


■『東京ステッキガール』
1巻:http://www.amazon.co.jp/dp/4065387981
1話(コミックDAYS):https://comic-days.com/episode/14079602755567610256

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