【書店ルポ】“日本一の眼鏡の町”鯖江駅、シャッター商店街になりつつも健闘する2つの老舗書店
■北陸新幹線開業が間近に迫るが…
3月16日、北陸新幹線の金沢駅~敦賀駅間が開業する。中間駅には、有名な温泉地への玄関口となる加賀温泉駅や芦原温泉駅、地域の中心駅である福井駅や敦賀駅などが含まれている。福井駅などの主要駅には開業までの日数をカウントする看板が立てられ、駅周辺では建設ラッシュにわいており、開業ムードの高まりを感じることができる。
小松駅や福井駅など新幹線が停車する駅は利便性が高まる一方で、新幹線開業の負の部分に直面してしまう駅もある。現在、北陸本線は鉄道ファンの間では“特急街道”と呼ばれるほど特急列車が行き交う。名古屋や大阪・京都方面から1時間に2~3本の特急がやってくる駅もある。
ところが、新幹線開業とともに、金沢駅~敦賀駅間は第三セクターのIRいしかわ鉄道とハピラインふくいに移管されることが決まっている。すると、一部の駅では移管とともに特急がなくなってしまうのだ。その代表格が、鯖江駅、武生駅などである。これらの駅は、現在は金沢から名古屋、京都、大阪へ乗り換えなしで直通できるが、3月16日からはそれができなくなる。利便性の急激な低下だ。
新幹線の開業後に特急が消滅し、新幹線の停車駅にもならなかった駅では、鹿児島県の阿久根駅や長野県の小諸駅などが有名である。同様のケースは全国にあるが、いずれも駅前は衰退しており、発展した例は一例もないのではないのではと推測される。こうした例を見ると、鯖江駅、そして隣の武生駅の将来も不安になってしまうのは記者だけだろうか。
■シャッターを閉めた店が目立つ
前置きがだいぶ長くなったが、今回は書店の実態調査を兼ねて鯖江駅を訪問した。鯖江といえば国産の眼鏡フレームの9割以上を生産する“日本一の眼鏡の町”として有名で、駅前にはフレームをかたどったモニュメントもある。まさに、唯一無二の産業を抱える町といえる。ちなみに、記者が愛用する眼鏡のうち5個は鯖江産であり、日頃からお世話になっているのだ。
駅から中心街へと歩いていくと、巨大な伽藍を構えた寺院がいくつも見られる。しかも、鐘楼や山門の彫刻が精緻で凄まじい。職人の町として栄えた鯖江は、それだけ富を有する人も多く、栄華を誇っていたのであろう。ところが、近年は安価な外国産の流入によって鯖江の産業も深刻なダメージを受け、後継者不足に悩まされていると聞く。そうした背景があるのか、中心街にはシャッターを閉めた店ばかりが目に付いてしまう。