【書店ルポ】“日本一の眼鏡の町”鯖江駅、シャッター商店街になりつつも健闘する2つの老舗書店
■駅前に残る老舗書店2店
鯖江の市街地に残る書店は、「藤田書店」と「富士書店」の2店である。そのうち藤田書店はコアロード・コマチ(古町)というアーケード街にある老舗である。店内には書店のコーナーのほかに文房具や雑貨を販売するスペースも併設され、少々のお菓子も販売されている。かつて地方都市には、こうした書店と文具店が合体した小売店が多かった。平日の昼、商店街にシャッターを下ろした店が目立つ中、営業を続けている藤田書店の存在が頼もしく思えてしまった。
店内には定番の雑誌から売れ筋の漫画まで、新刊が充実していた。『【推しの子】』も平積みにこそなっていないものの、店頭に全巻が2セット分揃っていたし、『葬送のフリーレン』なども最新刊がしっかり入荷している。地方の書店によっては売れ筋の単行本ほど取次の都合で店頭に並びにくい傾向があるが、藤田書店は盤石のようだ。ただ、中小規模の出版社が出す漫画は、もともとの印刷部数の少なさゆえか、入荷がないように見受けられた。
富士書店はアーケードから少し離れた場所にある。壁に懐かしさを感じる「週刊現代」の看板が現存し、レトロ感漂う小学館の学年誌のラックに雑誌が並ぶ。そして、「本屋ですがお茶も飲めます」「おしゃべりもできます」「本も買えます」という看板が立てられている。喫茶コーナーを併設した書店は、「TSUTAYA」などの大型書店だけでなく、地方の小規模書店にも増えつつある。おそらく書店の規模は縮小したのであろうが、独自路線で営業を続けているようだ。
駅前に書店ゼロという地方都市が増えている中、鯖江は健闘しているのではないだろうかと感じた。これまでこの連載で地方書店の実情を取材してきているが、書店の数は町の活気と比例するという法則がある。書店は地方の文化発信基地であり、市街地に人の流れを生み出す原動力であるためだ。シャッターを閉めた店も多い中、営業を続ける藤田書店と富士書店には頑張ってほしいと願わずにはいられなかった。