ライターが選ぶ「2023年に読んだ漫画BEST5」もり氏編 最も笑った『この復讐にギャルはいらない』

ライターが選ぶ「2023年に読んだ漫画BEST5」もり氏編

『8月31日のロングサマー』伊藤一角

 夏休みの最終日、8月31日が延々とループする世界に巻き込まれた男子高校生の鈴木鷹也と女子高生の高木佳夏。2人の記憶以外は全てループしてしまい、何度繰り返しても8月31日が訪れるというエンドレス夏休み状態に。

 このループを解消するために鷹也が導き出した仮説。それは自身の未練=「彼女を作って童貞を捨てる」こと。そう、この世界に鷹也の未練を解消することのできる人間は1人しかいない。

 もう薄々お気付きかも知れないが鈴木鷹也という人間は中々にキモい。自覚症状がないタイプのキモさである。しかしながら誠実さも併せ持っており、その真っ直ぐさ故に所々でキモさが顔を出すタイプの男子高校生なのだ。佳夏もそんな鷹也にほんのり好意を持っているようでもあり、しっかり気持ち悪がっているようでもある。

 2人のエンドレスサマーにいつ、どのような形で終止符が打たれるのか、今から楽しみで仕方がない。

『環と周』よしながふみ

 『大奥』『きのう何食べた?』等の作品で知られるよしながふみ先生による1巻完結の作品。本作では「環(たまき)」と「周(あまね)」という2人の人物が、1話ごとに描かれる時代も異なり、友人同士、上司と部下、ご近所同士といったそれぞれの関係性の中で出会い交流を重ねていくストーリー。

 物語の根幹となる第5話がある種、モノローグのような役割を持つと筆者は感じているが、本作は読んだ人の数だけ感想がある、そんな作品であり、この作品はこうだと形容することが非常に難しい印象を持った。

 ぜひ家族や友人同士で本作について感想を語り合うことをお勧めしたい。作品のどこに惹かれ、何を感じ、何を心に抱いたのか。巻末に添えられたエピローグを読み終えた時の余韻は2023年に読んだ作品の中でも1番といっていいくらいに、心地良い読後感だった。また1つ大切な作品が増えた瞬間だった。

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