『SPY×FAMILY』豪華客船編 で議論再燃……「殺し屋は幸せになっていいのか」問題を考える
『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』に登場するヨル・フォージャーの設定をめぐって、インターネット上では以前からとある論争が起きている。「殺し屋が幸せな家庭を築いていいのか」という倫理的な問題が気になる人がいるらしく、さまざまな意見が交わされているのだ。現在、TVアニメで「豪華客船編」のエピソードが放送されたことをきっかけに、あらためてその議論が再燃している。
ヨルはフォージャー家の一員にして、どこにでもいる市役所の職員。しかしその裏の顔は、秘密組織「ガーデン」に所属する〈いばら姫〉という殺し屋だ。普段の温厚そうな言動とは打って変わり、仕事中には容赦なくターゲットを葬り去っていく。
とくに「豪華客船編」はヨルの裏の顔にスポットが当たるエピソードとなっており、裏組織の生き残りである女性を護衛するミッションのため、豪華客船内で刺客との戦いが勃発する。
そして11月25日に放送されたMISSION:33「船上の交響曲(シンフォニー)/姉のハーブティー」では、甲板上で大勢の刺客たちを次々仕留めていくシーンが登場。コミカルな演出が挟まれていたものの、相手にトドメを刺して返り血を浴びる描写もあり、殺し屋という仕事の過酷さが生々しく表現されていた。
基本的に同作はコメディ寄りの作品だが、フォージャー家の面々が平和な家族像を演じる“表”のストーリーと、政治や裏社会が絡んだシリアスな“裏”のストーリーのあいだには、大きなギャップがある。そのギャップがもっとも顕著に表れているのが、ヨルをめぐる描写なのではないだろうか。
ヨルはターゲットを始末しても良心の呵責を抱かず、仕事として割り切って裏稼業を行っている。その一方で、フォージャー家ではよき母親になるべく邁進する日々。この落差こそがヨルの大きな魅力となっていることは間違いないが、人によっては「殺し屋が普通の家庭で幸せになっていいのか」という疑問が出てくるようだ。
たしかに殺し屋がメインキャラクターになる作品は、悲劇的な結末を迎えることが多く、コメディ系の場合は“引退した元殺し屋”といった設定のひねり方をすることが多い。現役のまま、母としてホームコメディを繰り広げるヨルの設定は、珍しいのかもしれない。
しかしこうした設定については、おそらく作者の遠藤達哉こそがもっとも自覚的だと思われる。