『SPY×FAMILY』アーニャはなぜ級友を魅了する? ヒエラルキーに無頓着な異邦人として存在感を考察
※本稿はアニメ『SPY×FAMILY』(テレビ東京系)の「MISSION:7 標的の次男」ならびに原作コミックス2巻までの内容を含みます。ご注意ください。
2022年5月22日、Twitterで「ダミアニャ」という言葉がトレンド入りを果たした。これはアニメ『SPY×FAMILY』(スパイファミリー)で描かれた、超能力少女アーニャと、彼女に特別な感情を抱くようになったクラスメイトのダミアンの姿から生まれた造語だ。
国家の行方を左右する作戦「オペレーション〈 梟 ストリクス 〉」を遂行するため、凄腕スパイ・黄昏がつくった擬似家族。孤児院から引き取られ、スパイ(父)と殺し屋(母:ヨル・フォージャー)の娘となったアーニャは、名門・イーデン校に見事入学し、ミッションのターゲットである国家統一党総裁、ドノバン・デズモンドの息子である、ダミアンに接近するのだった。
ダミアンも、あるいは東国の大手軍事企業「ブラックベル」のCEOを父に持つ少女、ベッキーも、最初こそアーニャを小馬鹿にしながら、間もなく、彼女が持つ不思議な魅力に惹きつけられていく。本稿では原作コミックをもとに、その経緯をまとめつつ、理由を考察したい。
生徒たちが意識するヒエラルキーと、そこから自由なアーニャ
まずはアーニャたちの通うイーデン校に漂う雰囲気を振り返りたい。
コミックス2巻「MISSION:8」では、入学したばかりの生徒たちが国家統一党総裁・デズモンドの息子であるダミアンのもとに集まる様子が描かれた。同級生たちが、デズモンドグループにお世話になっていることを親から聞いたとゴマをする姿が見られる。
同級生たちの台詞からも、物語の舞台である「東国」には強固な社会階級が存在していると考えられる。この国では子どもたちも、身近な集団のなかで家柄等によるヒエラルキーを意識しているのだろう。イーデン校のような「名門校」ともなればなおさらだ。
そのなかで、国家統一党総裁の息子であることを自慢げに話すダミアンの姿や、大手軍事企業CEOの娘・ベッキーが初対面のアーニャを一目見て「ガキっぽい子/世話役くらいにはしてあげてもいいかしらね」と心の中で思う様子が強調される。当初、アーニャは彼らの眼中にない存在だったのだ。
優れた成績や社会経験などに応じて授与される星(ステラ)といった評価制度もあいまって、他者との優劣を強烈に意識するイーデン校の生徒たち。そのなかでほとんど唯一、社会的地位/ヒエラルキーに無頓着なのがアーニャだ。当然のようにクラスに波風を立て、あまつさえダミアンの横暴を咎めるべく、強烈なパンチまで見舞ってしまう。何不自由なく育ち、逆らうものがいなかったダミアンが初めてやり込められる印象的なシーンで、当然、彼は大きなショックを受けるが、同時にそれは窮屈な社会から解放する一撃だったのかもしれない。