『ベルセルク』再開した物語の仕上がりは? 三浦建太郎の不在を埋めようと奮闘する、スタジオ我画の強い意志

『ベルセルク』42巻の仕上がりは?

 『ベルセルク』(白泉社)の第42巻が、9月29日に発売された。本作は1989年に始まり、現在も漫画雑誌「ヤングアニマル」で不定期連載されているダークファンタジー漫画。中世ヨーロッパを思わせる世界を舞台に、長剣を振るう黒の剣士・ガッツが使徒と呼ばれる怪物たちと戦う物語として始まった本作は、傭兵時代にガッツが出会った鷹の団のリーダー・グリフィスのと壮大な愛憎劇へと変わっていった。巻を重ねるごとに世界観は広がり、一時は収集がつかないのではないかと懸念されたが、40巻で物語は節目を迎え、いよいよ結末に向かう気配が漂っていた。

 しかし、2021年に作者の三浦建太郎が大動脈解離で突然の死去。連載は中断となり、このまま未完で終わるのではないかと危ぶまれたが、最終回までの構想を聞かされていた三浦の親友で漫画家の森恒二が監修を行い、アシスタントを担当していたスタジオ我画のチームが作画を担当することによって、連載が再開された。

 本作は三浦の作家性が細部まで貫かれた漫画だったため、圧倒的な作画と妥協のない重厚な物語をどこまで引き継げるのかと読者としては心配だった。同時に、どんな形でも構わないので物語を完結させてほしいという気持ちもあった。

 そんな複雑な心境で42巻に目を通したのだが、再開された物語には、作者が亡くなったことに対する喪失感を強く感じると同時に、その喪失感こそが『ベルセルク』が結末に向かう上での、大きな推進力となっているように感じた。

※以下、ネタバレあり。

 グリフィスが闇の翼・フェムトに生まれ変わるための降魔の儀「蝕」の贄にされたショックで、幼児退行を起こした仲間のキャスカの治療と身の安全を確保するために妖精島を訪れたガッツ一行。キャスカは記憶を無事取り戻し、ガッツは束の間の休息を過ごしていたが、そこにグリフィスが現れ、キャスカを連れ去ってしまう。

 その後、グリフィスの巨大な力の影響で妖精島は崩壊。ガッツ一行は島から脱出するが、キャスカを奪われ、剣がグリフィスの体をすり抜けて攻撃が一切当たらなかったことにショックを受けたガッツは塞ぎ混んでしまう。

 絶望のどん底にいるガッツを救うため、魔法使いのシールケが魔法の儀式を行う中、グリフィスが率いる新生・鷹の団に敗北したクシャーン帝国の兵士たちが突然、ガッツ一行の船を襲撃する。

 『ベルセルク』は連載が進むにつれて、作画の密度と反比例して物語のスピードが落ちていたのだが、この42巻は物語が一気に加速した。同時に作画の描き込みに関しては前巻と変わらない密度となっており、三浦の不在を埋めようと奮闘するスタジオ我画の強い意志を感じた。各登場人物の絵柄もそこまで大きな変化はなく、ダークファンタジー漫画としての『ベルセルク』のクオリティは落ちていないと感じた。

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