『ベルセルク』再開した物語の仕上がりは? 三浦建太郎の不在を埋めようと奮闘する、スタジオ我画の強い意志

『ベルセルク』42巻の仕上がりは?

 一方で大きな変化を感じたのが、ガッツの描かれ方だ。巻が進むにつれて、ガッツの顔が老け込んでいくのが『ベルセルク』の面白さで、劇中のガッツには、長期にわたる連載の中で、作者の三浦建太郎の加齢に伴う肉体の衰えや考え方の変化が投影されていた。

 荒々しく血気盛んだったガッツが戦いを重ねる中で老生し、自分より経験が少ない未熟な若者たちを見守るおじさん化していく姿に漫画家・三浦建太郎の成熟が透けて見えたのが本作の隠れた面白さだった。そういった「老い」を42巻のガッツからはあまり感じられず、そのことが三浦の不在を際立たせているのだが、逆に倒れたガッツを守るために仲間たちが団結し、シールケがガッツを救う儀式に挑む姿には、三浦建太郎亡き後に『ベルセルク』を完結させるという重責を担うことになった森恒二とスタジオ我画の苦悩が重なって見えた。ダークファンタジーの背後に、作り手の顔が見える『ベルセルク』の面白さは、形を変えて引き継がれていると感じた。(参考:私漫画としての『ベルセルク』ーー成馬零一の『ベルセルク』評

 42巻のラストでクシャーン兵とガッツ一行が衝突したため、いずれは鷹の団の生き残りであるリッケルトと行動を共にしている、クシャーンの将軍だった妖術使いのダイバと、暗殺集団・バーキラカがガッツ一行に合流し、キャスカを取り戻すためにグリフィスが統治する鷹都(ファルコニア)に攻め込む展開となっていくのではないかと思う。

 面白いのは、ガッツ一行がどんどん大所帯になっていることで、妖精島で暮らしていた魔女のモルダも船に同乗している。物語の中心になるのはガッツとグリフィスの因縁だが、二人を取り巻く人々の物語としての側面が42巻では強まっており、おそらく完結へと向かう中で、登場人物全員に焦点が当てた壮大な群像劇に変わっていくのではないかと思う。

 「あとがき」で森恒二は「ガガのスタッフや担当の方々は皆 三浦をベルセルクを残そうと必死で頑張っています。 これから刊行される一冊一冊はそういった想いの結晶です。」と書いている。三浦建太郎亡き後の『ベルセルク』は無事、結末に辿りつけるのか? 最後まで見守りたい。

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