『正反対な君と僕』が注目されるのはなぜ? 阿賀沢紅茶が描く令和ならではの主人公像

阿賀沢紅茶が描く令和ならではの主人公像

 漫画アプリ「少年ジャンプ+」で連載中の、原作の『正反対な君と僕』(阿賀沢紅茶)が面白い。2021年に読み切りから連載をスタートし、「マンガ大賞2023」にノミネートされるなどいま最も注目を集めている作品の一つ。ファンタジーやバトルものイメージが強い「少年ジャンプ+」の中にあって、付き合いたての高校生カップルの日常を描く正統派ラブコメだ。

 派手なバトルシーンも、熱い友情も描かれないが思わず共感してしまう、阿賀沢紅茶が描くラブコメ。その魅力の源はどこにあるのか。

派手なルックスなのに周りの目を気にしすぎる“SNS世代”

 阿賀沢紅茶氏の描く主人公は、いつも悩んでいる。前作『氷の城壁』では、人との距離感に悩み、気にしすぎるがゆえに他人との間に壁を作ってしまう主人公・小雪を描いた。

 今作『正反対な君と僕』の主人公・鈴木みゆも、一見明るく元気だが、周囲の目を気にしがちなギャルという性格だ。鈴木は、自分の意見をはっきり言える“物静か男子”の谷悠介に惹かれるが、自分の気持ちがクラスメイトにバレないようにと気にしすぎて、独特の(ダルい)絡み方ばかりしてしまう。

 谷と両思いになってからも、携帯でデートや長続きのコツを検索し、「最強の彼女になってやる」と息巻いたり、デート中にカップル写真を撮ってもらいたいのに「間」が怖くて人に撮影を頼めなかったり。常に人の目を気にして空気を読もうとする様子は、まさにSNSのいいね数を気にするZ世代の高校生像そのものだ。

主観的でロマンチックなラブストーリーではない

 対するもうひとりの主人公・谷も、話数を重ねるごとに、実は自己評価が低いことが浮き彫りになっていく。

 例えば、付き合い始めたことを「鈴木さんのイメージが下がったりしたら嫌だから」と濁す谷と、「イメージ下がるほど鈴木って「上」にいんの?」と確信をついた言葉をあっけらかんと言う同級生の山田の言葉の対比は、作品序盤のハイライトといえる。

 ストーリーが進むにつれて、他人の目を気にしすぎていた自分たちに気づき、互いへの気持ちを素直に口や行動に出し始めるところも初々しく、リアルな高校生の成長ストーリーとなっていて微笑ましい。

 そこには、見慣れた主観的でロマンチックなラブストーリーは存在しない。徹底的にリアルで、“令和ならでは”とも言える青春群像劇に注目してほしい。

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