『地獄先生ぬ~べ~』必殺武器の”鬼の手” 名作映画「エイリアン」の生んだ有名デザイナーがヒントになっていた!
『地獄先生ぬ~べ~(以下、ぬ~べ~)』の作画を担当した漫画家の岡野剛が、『ぬ~べ~』30周年を機にX(旧Twitter)でファンの質問に回答し、話題を呼んでいる。
ご存知、『ぬ~べ~』は1993年に連載が開始された90年代の「週刊少年ジャンプ」を代表するヒット作である。アニメ化もされた岡野の代表作であり、鬼の手をもつ学校教師の鵺野鳴介(ぬ~べ~)が、子どもたちを守るために悪霊と戦う少年漫画である。
そんなぬ~べ~の必殺武器である鬼の手だが、いわゆる昔話に出てくる鬼とはまったく異なる、独特の見た目をしている。いったいなぜ、あの造形になったのか。岡野はファンのポストに反応し、鬼の手の誕生秘話をこう語っている。
「ぬ〜べ〜の直前に梅澤春人先生の『酒呑☆ドージ』を手伝ってまして、昔話などにとらわれない、現代的なカッコいい鬼のデザインについて2人で話してました。そこで鬼の手のデザインはH.R.ギーガー(エイリアンのデザイナーで有名)を参考にし、これを全身に広げる形であの鬼のデザインになったのです」
ぬ〜べ〜の直前に梅澤春人先生の「酒呑⭐︎ドージ」を手伝ってまして
昔話などにとらわれない、現代的なカッコいい鬼のデザインについて2人で話してました
そこで鬼の手のデザインはH.R.ギーガー(エイリアンのデザイナーで有名) を参考にし
これを全身に広げる形であの鬼のデザインになったのです https://t.co/tPVAhd1ek9
— 岡野剛@「地獄先生ぬ〜べ〜」30周年 (@Takeshi_Okano) September 2, 2023
梅澤春人といえば、『BOY』『カウンタック』などのヒット漫画を生み出した漫画家であり、『るろうに剣心』の和月伸宏も一時期、梅澤のアシスタントを務めていた。あの斬新なデザインが、梅澤との議論の中で生まれたと思うと興味深い。ちなみに、『ぬ~べ~』の登場する鬼は、後半に登場するキャラクターの眠鬼をはじめ、ギーガー調ともいえるデザインで統一されている。
ギーガーのデザインは『エイリアン』で一世を風靡したほか、日本の様々なクリエイターに影響を与えている。X JAPANのギタリストのHIDE(ソロ活動ではhide名義)が初めて出したアルバム『HIDE YOUR FACE』のジャケットの仮面も、ギーガーによるものだ。HIDEの世界観と、ギーガーが見事に合致した名作であり、HIDE自身の目が仮面の中にコラージュされている。ギーガーが自作に手を加えさせた稀有な例としても知られる。
このアルバムが出たのが1994年で、『ぬ~べ~』の連載開始がその前年の1993年ということを考えると、ギーガーが多方面の文化に影響を与えたことが理解できよう。そして、『ぬ~べ~』の今までの妖怪もの、心霊ものの漫画とは違うインパクトは、岡野のこうした試行錯誤や斬新な発想によって生み出されていたことがよくわかる。