『アンデッドガール・マーダーファルス』の魅力とは 著者・青崎有吾の博学さと19世紀ヨーロッパ文学の融合

アンデッドガール・マーダーファルス考察

  ところで、余談ついでに誤解と解かなければいけないのだが、「ドラキュラ」は≠吸血鬼である。「ドラキュラ」はブラム・ストーカーの『ドラキュラ』に登場する「ドラキュラ伯爵」というキャラクターの固有名詞であり、吸血鬼そのものの事は指さない。吸血鬼に該当するのは「ノスフェラトゥ」や「ヴァンパイア」である。文豪と同名のイケメンが異能力でバトルする『文豪ストレイドッグス』にブラム・ストーカーが登場するが、同作のストーカーは吸血鬼になっている。

  また『アンデッドガール・マーダーファルス』には実在の人物として切り裂きジャック(生没年不明)、アレイスター・クロウリー(1875-1947)も登場する。切り裂きジャックは世紀末のロンドンで暗躍した連続殺人鬼だ。どこまでが本人でどこまでが模倣犯なのかはもはや歴史の闇の中だが、少なくとも5人の娼婦を限りなく猟奇的な方法で惨殺したとされている。

  日本の漫画、アニメにもたびたび登場し、最近の作品では『ゴールデンカムイ』『終末のワルキューレ』に姿を見せている。アレイスター・クロウリーは19世紀末から20世紀の初頭に活躍した近代魔術の大家である。

  アニメ、漫画好きにとっては『とある魔術の禁書目録』でお馴染みであろう。『アンデッドガール・マーダーファルス』ではオカルティックな能力など持っておらず、すべてタネも仕掛けもある奇術であると設定されている。同時代だと文豪サマセット・モーム(1874-1965)の小説『魔術師』に登場する魔術師はクロウリーがモデルと言われている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる