『ケンシロウによろしく』主演・松田龍平はなぜハマり役? 『北斗の拳』研究の末、最強指圧師になった主人公のキャラクター性
9月22日からDMM TVで独占配信される、実写ドラマ『ケンシロウによろしく』。主演が松田龍平に決定したことが話題になっているが、実際の映像/演技を見るまでもなくハマり役だと確信できるキャスティングだ。
原作を知らない人も、タイトルにある「ケンシロウ」という名前から、『北斗の拳』に関連する何かだと想像がつくだろう。
同名の原作は2020年3月より、講談社「ヤングマガジン」誌で連載中の人気漫画。松田が演じる主人公・沼倉孝一は、幼少期に母を奪ったヤクザへの復讐のため『北斗の拳』を読み込み、ツボ(秘孔)を研究し暗殺術を極めることだけに邁進してきたが、人の命を奪うどころか幸せにする史上最強の「マッサージ(指圧)師」になってしまう……という、バカバカしくも愛すべきキャラクターだ。
同じ「よろしく」でも、医療の問題に鋭く迫った『ブラックジャックによろしく』とは違い、ドラマ版で脚本を務めるのがバカリズムという情報からもわかるように、ギャグ漫画としての側面が強い本作。ケンシロウからすれば「“よろしく”と言われましても」と困惑すること請け合いの物語だが、おふざけ満載のなかに不思議な哀愁が感じられるのも魅力のひとつだ。
さて、そんな作品の主演として、松田龍平がぴったりなのはなぜか。それはミステリアスであり、クールであり、ときに人を寄せ付けないアウトローなオーラを放ち、しかし同時に憎めない人物も演じられるという、俳優としてのパブリックイメージが沼倉というキャラクターに見事にハマるからだ。
物語自体はコメディだが、沼倉はいつもシリアス(真剣)で、常人ならざる空気を纏っている。誰に対しても配慮も忖度ないストレートな言動で、いわば「クールタイプのぶっきらぼう」だ。一方で、具体的なネタバレは控えるが、とある事情で復讐すべき相手の身体を本気でメンテナンスするなど、「発想はぶっ飛んでいるが、根はいいやつ」でもあり、このキャラクター性が松田によく似合う。
さらに、本作は異世界転生系作品に近い構造で、「ケンシロウが血で血を洗う世紀末ではなく、現代に生まれたら確かにこんな感じかもしれない……」という妙な納得感がある。現実社会に馴染み切らない、どこか無機質でミステリアスな存在感を放つ演技も、松田の得意分野だと言えるだろう。
気になるのは、ひょんなことから沼倉の助手となる里香のキャスティングだ。沼倉と読者をつなぐ狂言回しであり、ツッコミ役であり、常識的な感覚を持ちながら物語を支えていく里香の配役次第で、松田演じる沼倉というキャラクターの面白さはさらに際立つに違いない。さらなる追加情報の発表、そして第一話の配信が楽しみだ。