花沢健吾『アンダーニンジャ』が共感と興奮を誘う理由……“普通の人”が”普通”の技を極めたバトル描写

花沢健吾『アンダーニンジャ』の共感力

 人間は格闘技や武術にこだわらずに、どこまで強くなれるのか──。『週刊ヤングマガジン』に連載中の人気漫画『アンダーニンジャ』が示しているのは、そんな“一般人の戦い”を極限まで突き詰めた境地だ。

 なぜ同作が読者の共感と興奮を誘ってやまないのか、その理由を忍者たちのバトル描写から読み解いてみたい。

 『アンダーニンジャ』は2018年から連載が始まった漫画で、今年10月からTVアニメ化されることも決定している。累計800万部を突破した大ヒット漫画『アイアムアヒーロー』の作者・花沢健吾による最新作だ。

 作品の舞台となるのは、およそ20万人の忍者が潜伏している世界線の現代日本。太平洋戦争後、忍者組織はGHQによって解体されたはずだったが、時代と共に変貌を遂げていたという。

 彼らは配達ドライバーや区役所の職員、コンビニ店員といった姿で世を忍んでおり、主人公となる雲隠九郎もいわゆる「ニート」にしか見えない。『アイアムアヒーロー』ではゾンビアクションと現代社会が並列に描かれていたが、今作でもフィクションとリアリティが交差する世界観は健在と言える。

 忍者たちは平凡な人間のように見えるが、各々が高度な“忍術”の使い手。しかしそれはファンタジーのような力ではなく、日常の延長線上にあるような技能だ。

 たとえば第1話から、印象的なシーンが描かれている。職にあぶれた末端の忍者である九郎は、紙巻たばこと爪楊枝を組み合わせた吹き矢をストローから飛ばし、暇つぶしがてらに腕を磨いていた。

 ほかにも、パルクールのような壁歩きによってトイレットペーパーを取りに行くなど、現代人の日常に密着した忍術のあり方が描かれている。

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