宮崎駿は作詞家としても凄かった  アニメーション監督との二刀流が生み出す歌詞の魅力

宮崎駿は作詞家としても凄かった

 『コクリコ坂から』では挿入歌の「紺色のうねりが」の作詞を宮崎駿が手がけているが、原案となったのは、宮沢賢治の「生徒諸君に寄せる」である。この詩は母校である旧制盛岡中学(現・盛岡第一高校)に寄稿文として書かれたものなのだが、完成はしておらず草稿のみが遺されている。歌詞を対比してみると、一部に共通の言葉を用いながら原案からより世界を拡げているような内容で、まるで連作のようにも捉えることができ、原案の選定を含めて、宮崎駿が宮沢賢治をいかに愛読してきたかがわかるはずだ。

 宮崎駿の作詞の特徴として、タイトルを含めて作品の世界観がわかりやすく、それでいて情景が思い起こされるような詞にある。そのため、口ずさんでいるとアニメの名場面が自然と思い起こされる人も多いのではないだろうか。アニメを見れば見るほど、曲にも引き込まれていく、そんな魅惑の歌詞になっているというわけだ。

 「君をのせて」は合唱コンクールの定番になっているし、「となりのトトロ」は幼稚園では定番だ。アニメ作品そのものが世代を超えて愛されるだけでなく、主題歌もまた、幅広い分野で愛されている。映像でも曲でも妥協しない宮崎の姿勢こそが、スタジオジブリ作品の完成度を引き上げている要因であるのは間違いない。

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