柴 那典の『モンパルナス1934』レビュー 「ポップカルチャーは、歴史の積み重ねから成り立っている」
そもそも細野晴臣と村井邦彦との出会いは、はっぴいえんどの結成以前にまで遡る。1969年、小坂忠が細野晴臣や松本隆、柳田ヒロと結成したエイプリル・フールを解散し、ロックミュージカル「ヘアー」に出演した頃のことだ。その「ヘアー」をプロデュースしたのが、川添浩史とその息子の川添象郎だった。ここで生まれた関係性は、村井邦彦が設立したアルファレコードでの荒井由実のファーストアルバム『ひこうき雲』で細野晴臣らキャラメル・ママがレコーディングに参加していることにもつながっている。この出会いをもたらしたのもキャンティだ。
つまり、60年代から70年代に至る日本のポップスの名盤の数々が生まれる背景に、30年代のパリ・モンパルナスでの川添浩史の物語があったということになる。
そして、そのカルチャーの水脈の物語は、2023年の今も終わっていない。たとえば世界を代表するポップスターとなったハリー・スタイルズの最新アルバム『ハリーズ・ハウス』のタイトルは細野晴臣の名盤『HOSONO HOUSE』からとったものであるし、2023年3月にハリー・スタイルズの来日公演が行われた際には細野晴臣のもとに“表敬訪問”に訪れていたりもする。たとえば2020年代になって数々のシティ・ポップの名曲がアジアから海外にリバイバルヒットしていたりもするが、その源流の一つもアルファレコードにある。つまり90年前と今は、ちゃんと繋がっている。
ポップカルチャーは、歴史の積み重ねから成り立っている。改めてそう痛感する。
■書籍詳細
タイトル:『モンパルナス1934』
村井邦彦 吉田俊宏 著
発売日:2023年4月30日
※発売日は地域によって異なる場合がございます。
価格:3,080円(税込価格/本体2,800円)
出版社:株式会社blueprint
判型/頁数:四六判ハードカバー/384頁
ISBN:978-4-909852-38-0
モンパルナス1934特設サイト:https://blueprint.co.jp/lp/montparnasse1934/
blueprint bookstore:https://blueprintbookstore.com/items/64366f9e427a88002f502e94