BiSHメンバー、解散後の活躍に出版界も期待 メンバーそれぞれが持つ“言葉の強さ”

BiSH、出版界からも熱視線

 “楽器を持たないパンクバンド”BiSHが、6月29日に東京ドームにて行ったワンマンライブ『Bye-ByeShowforNeveratTOKYODOME』をもって、約8年に渡る活動に終止符を打った。東京ドームには約5万人の清掃員(ファンの総称)が訪れ、まさに有終の美を飾るライブとなった。

 解散後、メンバーはそれぞれ活動の拠点を移し、別々の道を歩むことも発表。セントチヒロ・チッチはソロプロジェクト「CENT」として、1stアルバムのリリースが決定。アイナ・ジ・エンドは、歌とダンスを中心に活動を続け、10月13日には初主演映画『キリエのうた』(岩井俊二監督)が公開される。モモコグミカンパニーは、ワタナベエンターテインメントに移籍し、執筆活動を中心とした文化人として活動する。ハシヤスメ・アツコはホリプロに移籍し、バラエティー番組を中心に活動する予定。リンリンは独立し、アートを軸に活動する。アユニ・Dは、個人事務所「株式会社 浪漫惑星」を設立して活動することを明かした。

 メンバー全員が個性あふれるグループだったBiSHだけに、今後の活動にも大きな注目が集まっている。2015年のシークレットデビューライブからBISHを見てきた音楽評論家/編集者の宗像明将氏に、特に彼女たちの出版界での活躍について、今後の期待を語ってもらった。

 「出版界での活躍というと、まずはモモコグミカンパニーさんの活躍に期待したいです。モモコグミカンパニーさんは『目を合わせるということ』と『きみが夢にでてきたよ』という2冊のエッセイ集を刊行していて、2022年には『御伽の国のみくる』(メイン画像参照)で小説家デビューを飾っています。7月末には2冊目の小説『悪魔のコーラス』も刊行する予定です。29日のライブのMCでは、5万人に向かって『あなたと会えたことは、私の生涯の誇りです』『モモコグミカンパニーとしてステージに立てたのは、あなたのおかげでした』と言っていて、やはり彼女は“言葉の人”なんだという印象を強く持ちました。数多くいる清掃員との関係性を『私とあなた』と表現するところに、文学的な才能を感じます。

 元アイドルが小説を書くこと自体は昨今、それほど特殊なケースではないと思いますが、BiSHはいわゆる通常のアイドルではなく、泥にまみれて這い上がってきたグループです。そういう経験もまた、作家としての強みになっていくのではないかと期待しています」

 文筆家としての活動が期待されるのは、モモコグミカンパニーだけではないと宗像氏は続ける。

 「アユニ・Dさんは個人事務所『株式会社 浪漫惑星』の設立発表で、『やりたいことがありすぎる人生でございます。音楽、ごはん、服、絵、本、映画、趣味であり特技でございます』とコメントしていました。本についても言及しているので、彼女もいずれは何かしらの形で著作を発表することが期待できそうです。言葉選びがユニークな方なので、文章や作詞でも才能を発揮していってほしいですね。

 リンリンさんは普段は無口なのですが、ライブでは『最後に右手を挙げて、私と握手しましょう』と独自の方法で感謝を伝えていて、やはり言葉に鋭さがある。アート方面での活躍をされるとのことなので、作品集などの刊行が期待できます。

 ハシヤスメ・アツコさんは、すごく言葉を丁寧に選んで、なおかつ流暢にお別れの挨拶をしていたのが印象的でした。細部まで目が届く方で、しかも律儀な性格なので、バラエティでの活躍はもちろんのこと、出版界でも需要がありそうです。

 アイナ・ジ・エンドさんは作詞作曲をしているので、詩集などを刊行してもらえると嬉しいですね。彼女の言葉はシンプルだけれど、嘘偽りがない感じで胸に響きます。言葉もまた、彼女の武器の一つだと思います。

 セントチヒロ・チッチさんはすでに1stアルバムで作詞作曲をしたことが発表されていて、真島昌利さん(ザ・クロマニヨンズ)や峯田和伸さん(銀杏BOYZ)も同作に参加しています。ライブの挨拶では『私はいまだに解散したくないなあ、と思ってしまう自分と戦っています』と言っていたのが彼女らしく、芯の部分に熱いものを持っているんですよね。彼女の持つメッセージ性は、音楽以外の形でも支持されるのではないでしょうか」

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