『ガンダム 水星の魔女』プロスペラの仕込んだ“呪い”は最終回までに解決される? 気になる物語の着地点
とうとう『水星の魔女』にも出現してしまった「悪の超巨大要塞」。第21話は様式美すら感じる展開ではあったが、同時にプロスペラの強烈な悪意も感じる回だった。
グエル&ドミニコス隊VSシャディクと仲間たち&ノレアの激闘により、ボロボロになってしまったアスティカシア学園。そんな中で、スレッタと地球寮のメンバーは自主的にブランケットやトマトを配り、自分たちにできることを進めていた。
一方、地球でのアーシアン対ベネリット側モビルスーツの戦闘の責任を痛感し、落ち込み続けるミオリネ。宇宙に戻ってきた彼女をグエルは元気づけようとするが、ペイル・テクノロジーズが議会連合と結託してベネリットグループを告発。ペイル社の離反を受けて議会連合側はベネリットグループの企業解体を目的とした強制介入を決定し、グループの総裁であるミオリネは窮地に追い込まれる。
一方、学園では議会連合のエージェントであるグストンがベルメリアを連れてスレッタや地球寮メンバーと接触。プロスペラへの説得を要請し、さらにヴァナディース事変で鹵獲したもう一体のガンダムへのスレッタの搭乗を依頼する。「何も手に入らなくても、できることをする」ことを決断したスレッタだが、そのタイミングで議会連合の艦隊がプロスペラとエリクトが乗り込んだクワイエット・ゼロに接触。プロスペラとエリクトはパーメットリンクを乗っ取ることで議会連合艦隊を壊滅させる。
ということで、一気に「最終回直前!」というムードになってきた『水星の魔女』。ア・バオア・クーからの伝統ではあるが、やっぱり「悪の超巨大要塞」が出てくると「大詰めだな!」という感じがしてくる。同時に「終わるのかな……」と思っていた『水星の魔女』も終わりそうに思えてくるから不思議である。
しかし、なんらかの概念というか人類補完計画というか、そんな感じのものだと勝手に思っていたクワイエット・ゼロが、あんな物理的に巨大な設備だとは思わなかった。あの大量に出てきた無人モビルスーツにしても、やっぱりスレッタたちがバチバチ撃墜して要塞のコアに突入するまでのスリルのためには必要だろう。ベタというか「いつものやつ」というか……という感じではあるが、やはり一騎当千の機体と仲間たちによる城攻めは盛り上がる。ここは素直に盛り上がっておきたい。
盗み聞きからの「わたしも同行する」をキメたエラン5号も、このキャラクターらしい図太さを見せていた。前回で相当ショックを受けていたのでは……と思いきや、すっとぼけた表情で再登場する辺りはさすがである。彼の「行きたいところ」というのは、おそらく巧みな立ち回りで一足早く逃げ切りをかけようとしているペイル社の重役たちのところではないかという気がするのだが、それはともかく「まともに落ち込みまくっているエラン5号」というのは考えづらい。このくらい図太い方が安心して見ていられるというものである。
それにしても強烈なのは、プロスペラの悪意だ。第16話ではミオリネを総裁にするべく交換条件を突きつけていたプロスペラだったが、その際の口上は「スレッタを解放するかわりに、クワイエット・ゼロを潰させないよう総裁になれ」というものだった。
しかし今回を見る限りでは、エアリアルでクワイエット・ゼロに乗り付けてそのまま起動できてしまっている。ミオリネを「総裁になれ」と焚き付けてから今回のクワイエット・ゼロ起動までどれほどの時間が経過しているか正確にはわからないが、年単位で時間が経過しているとは到底思えない。せいぜい数週間〜1ヶ月ちょっと程度ではないだろうか。
あれだけの巨大構造物だ。完成するまでには何年もかかっただろう。にも関わらず16話以降の時間経過がその程度だとしたら、プロスペラがミオリネを焚きつけた頃にはほどクワイエット・ゼロは完成していたことになる。別にミオリネが総裁になろうがどうだろうが、起動自体は可能だったはず。プロスペラはそれ以外の条件が揃うのを待ってから、クワイエット・ゼロを起動したわけである。
おそらく、「クワイエット・ゼロの完成」以外の復讐の条件のひとつが、ミオリネがベネリットグループ総裁になることだったのではないだろうか。憎いデリングの娘をベネリットグループのトップの座に据えて、その後で全ての罪をなすりつける……それもプロスペラの計画のうちだった可能性が高い。