追悼:高橋真琴 【推しの子】アイの“輝く目”にもつながる革新的な表現を振り返る

追悼・高橋真琴 現代の漫画家にも影響

少女漫画/少女画界の巨匠、死去

 少女漫画界を代表する巨匠であり、少女画家としても活躍した高橋真琴が、11月17日、千葉県内の病院で死去した。90歳。死因は食道胃接合部がん。アートスペースなどが運営する高橋真琴展の公式Xで12月16日に発表された。なお、葬儀は近親者のみで既に執り行われ、また、故人の遺志により偲ぶ会などを開催する予定はないという。

 1934年に大阪で生まれた高橋は、1953年に『奴隷の女王』を発表し、貸本漫画作家として活躍。その後は「少女」に『あらしをこえて』などを発表し、「なかよし」「マーガレット」などの黎明期の少女漫画雑誌の表紙を数多く担当。また、雑誌の付録やグッズのイラストも数多く手がけ、当時から少女漫画の第一人者として認知された。

 そして、高橋は少女漫画の表現技法に革新をもたらした漫画家の一人として知られる。なかでも特筆されるのが、登場する少女の瞳の中にキラキラとした星の輝きを描く、少女漫画を象徴する表現を確立した点である。こうした描き方から同世代の漫画家の多くが影響を受け、もはや少女漫画の枠を超えて漫画の表現技法として定着している。

 12月18日、『【推しの子】』の最終巻16巻が発売された。『【推しの子】』の作画を担当した横槍メンゴは、主人公のアイの瞳の中に光り輝く星を入れて、至高のアイドルを表現している。こうした表現は、まさに高橋が確立した技法を、現代に継承していると言っていいのではないか。

 1987年には、千葉県佐倉市に「真琴画廊」を開設。1990年以降は少女画家として注目を集めるようになり、1995年には初の画集『あこがれ』(光風社出版/刊)を出版したほか、各地の百貨店や画廊、美術館などで個展を開催。緻密な描線と彩色によって描かれた作品を発表し続け、多くの人を魅了した。

 2010年代に入ると、そのファッション性にも注目が集まった。2013年には「Victorian maiden」とコラボを行い、2018年にはパリ・コレクションで「コム・デ・ギャルソン」とコラボが実施された。晩年になっても創作意欲が衰えることはなく、平面から立体までクリエイターとして多彩な表現を行い、第一線で活動を続けた。

 高橋の影響力の大きさについては、2023年に開催された「日本マンガ学会第22回大会」でも研究発表がなされるなど、学術的観点からも注目されつつある。また、その絵柄は、近年の昭和レトロブームの影響もあってか、若い世代からも評価が進んでいた。まさに、世代を超えて愛される作品を手掛けた漫画家であった。

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