【漫画】微生物の力で間取りも自由自在の「バイオ団地」が実現したら……住宅×SFの創作漫画が見せる近未来の人間ドラマ
キッカケは住宅メーカーのコンペ
――今回『バイオ団地』を描いた経緯を教えてください。
駒津:住宅メーカーのLIXILが実施した『FUTURE LIFE CREATIVE AWARD』というコンペがありました。SF作品の応募を募って、その作品内に登場した建築物から新しい建築物を考える、という面白い企画で、本作はこのコンペ用に描き上げた作品です。ありがたいことに入選をいただきました。
――バイオ団地を扱う名取の明るい表情、入居を考えているヨルカの冷めた表情など、喜怒哀楽が巧みに表現されていました。
駒津:キャラクターの表情を描く時は、いくつかの感情が混ざり合った状態を意識しています。例えば、ヨルカから「島がもう存在しない」と聞かされた名取の表情は「センシティブな部分に触れてしまった申し訳なさ」や「ヨルカの悲しみに対して何もできないもどかしさ」などを込めて描きました。
――表情ですとラストのヨルカの笑顔が印象的でした。
駒津:ラストのヨルカの表情は、名取ができる範囲で自分の気持ちに寄り添ってくれたことに対して、心の空虚だった部分が少し埋まった、というイメージで描いています。
微生物の技術は実装寸前?
――微生物の力で老朽化した団地をリニューアルする、という設定が面白かったです。これは実在する技術やサービスを参考にしたのですか?
駒津:はい。アメリカやイギリスで研究されている微生物の力を利用した建築技術や修復技術を参考にしました。私が参考にした記事は2018年ごろのものだったのですが、そう遠くない未来に実現しそうなので今からワクワクしています。
――バイオ団地の内装、外装はどのようなイメージで描きましたか?
駒津:内装は海外のインテリア写真、外装は自宅の近くにあるアパートをベースに描いています。コンペの締切まで時間があまりなかったということもあり、ササッとデザインしました。ただ、「もう少しディテールに拘れば良かった」と反省しています。
――ヨルカ同様、「どこに住んでも同じ」と考えている人は少なくありません。ただ、本作を通して「せっかく住むのであれば楽しい気持ちになれる空間が良い」という“感覚”も、家賃や間取りなどの“条件”と同じくらい大切なように感じました。
駒津:本作は「環境と共に人の文化やアイデンティティも守る技術」をテーマにしています。“便利な家=良い家”ということは必ずしも言い切れません。ある程度の不便さも時には愛着に繋がる思っているので、そういったところが表現できていたのであれば嬉しいです。
――最後に今後漫画制作をどのように展開していきたいですか?
駒津:2022年秋に、ネットで発表していた『奇妙な街の鳥たち』を出版社から書籍化してもらい、「仕事をしながらでも漫画を描いても良いんだ」という自信が持てました。現在は6~12ページほどの読み切り漫画を中心に投稿していますが、今年はまた新しい長編に挑戦したいです。より多くの人に漫画を読んでもらうため、活動の場も少しずつ拡げていきたいと考えています。
作品情報
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