ドラマ放送中『夫を殺したはずなのに』赤石真菜と担当編集が語る、セオリー破壊の真意 「『カテコワ』を超える作品を」

テレビ東京のドラマ史上最高となる見逃し配信総再生数3,500万回(※1)を記録し、主演・松本まりかの怪演がネットミームになるなど話題を呼んだ『夫の家庭を壊すまで』(通称:『カテコワ』)。その原作者・赤石真菜による最新作『夫を殺したはずなのに』は、何度死んでも不倫夫と愛人への復讐を繰り返す“サレ妻”を描いたタイムリープ復讐サスペンスだ。2026年7月よりドラマも放送が開始され、着々と注目を集めている。
本作は、従来の不倫・復讐モノのセオリーをあえて外した意欲作でもある。大ヒットした前作を超えるために挑戦したことはなにか。赤石氏と担当編集・五十嵐氏に話を聞いた。
『カテコワ』原作者 × 『オトサツ』担当編集の出会い

——『夫を殺したはずなのに』は、赤石さんにとって2作目のドラマ化になります。原作漫画はCLLENNとテレビ東京による初の共同制作ですが、どのように企画が始まったのでしょうか。
五十嵐:新作を立ち上げるにあたって、『カテコワ』はかなり意識していました。他社作品ではあるものの、当時から頭ひとつ抜けた存在だったので『カテコワ』を分析し参考にして編集部内へFBをしていたのですが「だったら直接『カテコワ』の方に執筆依頼をすればいいのでは?」という考えに行きつきまして(笑)すぐさま赤石さんへDMを送りました!
赤石:もともと『オトサツ』(※2)を楽しく見ていたので、その担当編集さんとご一緒できるならと。私も『カテコワ』に次ぐ作品を作りたいと考えていたタイミングだったので、お話をいただいて嬉しかったです。
——『カテコワ』原作者×『オトサツ』担当編集の最強タッグには、そんな誕生秘話があったんですね!
五十嵐:当時、赤石さんはほかからもいくつかオファーを受けられていて、お忙しい中でも月に1回ほど打ち合わせを重ねていました。そのうちに「これはいけるぞ」という手応えを感じて。そこで『オトサツ』シリーズのドラマ化でお世話になったテレビ東京のプロデューサーさんにプロットをお見せしたところ、ドラマ化にもつながりました。
——そうして始まった本作ですが、先生たち作り手からすると、縦読み(ウェブトゥーン)の漫画と横読みの漫画で違いを感じますか。
赤石真菜(以下、赤石):本作『夫を殺したはずなのに』では、スプレッドシートに上から下に流れるようにシナリオを書いています。「この構図のここにセリフを入れてほしい」といったように、構図や演出まで細かく指定するのですが、たとえば足元のカットから次の瞬間には表情のアップになるなど、映像に近い演出も多い。実は大学時代に映画制作を学んでいたので、その時に学んだ映像演出の考え方が、いまのシナリオ作りにも活きているように思います。

——そう言われてみると、縦読み式のシナリオは絵コンテに似ていますね。
赤石:そうなんです。大学時代は絵コンテも描いていたので、その経験がシナリオの書きやすさにつながっているのかもしれません。
五十嵐:横読み漫画とウェブトゥーンでは、そもそものビジネスモデルが大きく異なります。雑誌で連載されて、ゆくゆくは単行本化される横読み漫画は、コレクションアイテムとして長期的に楽しむ側面もある。一方のウェブトゥーンは単話買い切りのシステムで、“即時的な消費”を前提としたコンテンツです。黎明期には横読みと縦読みの対立を煽る声もありましたが、ビジネスモデルも楽しみ方も異なる別のメディアなので、一概に比較できるものではないと個人的には思いますね。

狂気を抱えた人がどう立ち直っていくか
——『カテコワ』から一転、『夫を殺したはずなのに』は、サレ妻が殺人犯となる不倫×復讐×タイムリープサスペンスです。この斬新なアイデアは、どこから生まれたのでしょうか。
赤石:まずは『カテコワ』を超えるくらい、多くの方に楽しんでもらえる作品を作りたいという思いがありました。そのうえで、幅広い層に人気のタイムリープと、根強い人気のある不倫・復讐モノを掛け合わせたら、より楽しんでいただけるんじゃないかと思ったんです。『カテコワ』のミステリー要素にも手応えを感じていたので、今回はさらに考察を楽しめるよう、謎解き要素も意識しました。
——愛する夫が、実は愛人とアダルト動画を配信していた……! という衝撃的な展開から物語が始まります。あまりに生々しい設定ですが、モデルにした出来事などはあるのでしょうか。
赤石:現実のニュースや出来事から着想を得ることが多いですね。アダルト動画配信者の設定も、カップル配信者が性行為をコンテンツとして発信し、多額の収益を得ているという話を耳にしたことがきっかけです。誰もが見たいわけではないけれど、どこか気になってしまう要素でもあると思い、今回のテーマに取り入れました。
——ドラマの主演が内田理央さんと渡邊圭祐さんに決まったときは、どのようなお気持ちでしたか。
赤石:お二人とも第一線で活躍されている大好きな俳優さんなので、まずは「引き受けてくださるんだ」という純粋な嬉しさがありました。性描写やショッキングなシーンも多い作品なので、それでも出演を決めてくださったことには、本当に感謝しています。
——内田さん演じる莉乃は、いわゆる“サレ妻”でありながら、かなりアグレッシブなキャラクターですよね。『カテコワ』の主人公・みのりとは、どのような違いがありますか。
赤石:どちらも過去にトラウマや心の傷を抱えている点は共通しています。ただ、『カテコワ』のみのりには息子がいて、大切な家族がいながらも復讐を決意する。一方の莉乃は天涯孤独で、守るものがありません。第1話のセリフにもありますが、不倫をされたとしても、殺さないはず。けれど、ある意味“無敵の人”となった莉乃は、その一線を越えてしまう。今回は、そんな狂気を抱えた人が一度壊れ、そこからどう立て直していくのかを描きたいと思いました。
五十嵐:『カテコワ』との明確な違いは、実際に人が死ぬこと。「不倫は魂の殺人だ」という言葉もありますが、本当に殺人まですることなのか。何度も繰り返すタイムリープという設定を通して、赤石さん自身もその問いにとことん向き合っていたと思います。
——「無敵の人」という言葉を聞くと、莉乃の躊躇いのなさにも納得できますね。実写化にあたり、特に楽しみにしていたシーンはありますか。
赤石:やっぱり、原作冒頭の莉乃の襲撃シーンですね。とてもショッキングな場面なので、映像ではどう描かれるんだろうと思っていましたが、想像以上でした。
五十嵐:「これはいける」と、第1話で確信しました。原作のあのシーンは、とにかく読者の心をつかむために意図的に入れたものです。あまりにショッキングなので、従来の読者から敬遠される可能性もあると思いましたが、それでも挑戦しようと腹をくくりました。
実は『夫を殺したはずなのに』は、少し複雑な構成になっています。わかりやすいカタルシスを目指すならば、別のやり方もあったかもしれない。でも、たとえ「わからない」と言われても、突き抜けたものを作ろうと赤石さんとも話していました。そのチャレンジのひとつとして、あの一話の掴みがあったんです。
赤石:ドラマ化にあたっては大変だったと思いますが、インティマシー・コーディネーターの方にも入っていただき、私たちが目指した世界観を丁寧に映像化してくださったことが嬉しかったですね。
『夫を殺したはずなのに』はセオリーから外れている?
——赤石さんにとっても、『夫を殺したはずなのに』は大きな挑戦でしたか?
赤石:そうですね。『カテコワ』は多くの方に楽しんでいただけるよう、わかりやすさを意識しましたが、今回はもうひとつ上の突き詰めた“裏”を描きたいと思っていて。結果的にショッキングなテーマにはなりましたが、それでも挑戦したかったんです。タイムリープという設定自体は非現実的ですが、「事実は小説より奇なり」という言葉があるように、現実にも起こりそうだなと思ってもらえるような生々しさの残る作品を目指しました。
五十嵐:正直なことを話すと、不倫・復讐モノをヒットさせるためのセオリーは、それぞれ別作品で経験してきたので、僕らなりにある程度わかっていると思っていて。今回の『夫を殺したはずなのに』は、そのセオリーをあえて外した作品なんです。何度殺してもタイムリープを繰り返すから、復讐は果たされない。いわゆる“スカッと”はしない。それでも、同じことを繰り返していては『カテコワ』は超えられないと思いました。
現に『カテコワ』『オトサツ』以降も、類似ジャンルの作品は数多く生まれています。そこでたびたび赤石さんに伝えていたのが、「この作品を以て、不倫・復讐モノを終わらせましょう」と。
——アツい……!
五十嵐:M-1グランプリの令和ロマンさんじゃないですけどね(笑)。マインド的には同じです。
——仰る通り、不倫・復讐モノは長年にわたって根強い人気を誇るジャンルです。そのなかで、赤石さんが意識されていることはありますか。
赤石:ウェブトゥーンは気軽に楽しめるスナックコンテンツだと言われますが、私はそこからもう一歩踏み込んで、人間ドラマとしても楽しんでいただける作品をつくりたいと考えていて。『カテコワ』では、それが少しできたのかなと感じました。読み終えたらすぐに忘れられてしまう作品ではなく、少しでも心に残る作品が、今後の不倫・復讐モノの中でも残っていくのではないでしょうか。
五十嵐:赤石さんはとても好奇心の強い方で、それは作家にも編集者にも欠かせないものです。今はその好奇心が不倫・復讐モノというジャンルに向けられていますが、根底にあるのは「人間を描きたい」という思い。テーマが不倫や復讐であっても、そこにあるのは人間ドラマです。赤石さんが描く人間の情念や生き様が、今後また別の題材でも発揮されるんじゃないかと楽しみにしています。
赤石:王道のヒューマンドラマを作られている方からすると、不倫・復讐モノは「ああ、またそれね」と思われるかもしれません。でも、そういうふうにくくってほしくないなという気持ちがあって。ジャンルとしてくくられるのではなく、一つの面白い作品として独立したい。それは毎回作品を書きながら思っていることですね。
——不倫・復讐と聞くと突飛なテーマに思いますが、視聴者にとって「家庭」は最も身近な社会ですからね。ここから物語は怒涛の展開を迎えます。今後の放送を楽しみにしている視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。
赤石:物語が進むにつれて、それぞれのキャラクターの印象もどんどん変わっていくと思います。「この人本当はこう考えていたんだ」といった発見やギャップを楽しみながら、ぜひ考察していただけたらうれしいです。どうして彼らがそんな行動を取ったのか、その理由にも注目してみてください。
個人的には、曽田陵介さん演じる樹がどれだけ“メロさ”を見せてくれるのか、とても期待しています!ドラマとは異なる展開になりますので、ぜひ漫画もあわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。

※1:TVer DATA MARKETINGにて算出、TVer・ネットもテレ東・Leminoの合計値
集計期間:2024/7/8~2024/10/7 #1配信開始日~#12最終話配信終了日
※2:五十嵐氏はテレ東で放送され人気を博したドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』の原作立ち上げ担当
◾️原作情報
『夫を殺したはずなのに』
原作:赤石真菜
漫画:デジタル職人
出版社:CLLENN(GIGATOON)
作品ページ:https://1-oshimanga.com/p000334/
◾️ドラマ情報
ドラマプレミア23『夫を殺したはずなのに』
毎週月曜 よる11時6分~11時55分
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
配信:各話放送終了後から、動画配信サービス「U-NEXT」「Lemino」にて第一話から最新話まで見放題配信 広告付き無料配信サービス「TVer」などで見逃し配信
原作:赤石真菜『夫を殺したはずなのに』
出演:内田理央、渡邊圭祐、箭内夢菜、曽田陵介、小林亮太、丹生明里、紺野まひる、山下容莉枝
シリーズ構成:市川貴幸
脚本:石田真裕子、伊藤優、島崎杜香、下田悠子、富安美尋、三嶽咲、井本智恵、市川貴幸
監督:飯塚健、棚澤孝義、的場政行
プロデューサー:倉地雄大(テレビ東京)、清家優輝(ファインエンターテイメント)
制作:テレビ東京 / ファインエンターテイメント
製作著作:「夫を殺したはずなのに」製作委員会
公式HP:https://www.tv-tokyo.co.jp/korohazu/
公式X(旧Twitter):@tx_premiere23
公式Instagram:@tx_premiere23
公式TikTok:@tx_premiere23























