『こっち向いてよ向井くん』が描く、現実としての恋愛 多様な価値観を認めることの難しさ
単行本第3巻では、路線バスになぞらえてこんなセリフが描かれる。
“「結婚」経由のバスから降りたってカンジ”
“そのバスは「恋愛」と「結婚」経由していくヤツだから そのルートを走ってんだけど…道は悪いし車酔いするし しかもなんか先では崖崩れしてるっぽいし このバスに乗ってて目的地(幸せ)に着けんのか? で 降りたワケ”
恋愛、結婚に限らず、各々が自分の幸せの形を探し、各々が自身の選択の上でその幸せに向かい、達成する。それは当たり前に認められるべきはずなのに、特定の要素だけが殊更に幸せとされ、その要素を達成できなかった人は無条件で不幸せと決め込まれてしまう呪いのような空気は今も根強い。各々の選択を各々が尊重できる社会こそが、真のダイバーシティであり我々が目指すべき社会なのだと本作品を読んでいると強く感じる。7月からは本作を原作にした実写ドラマもスタートする。私は具体性を帯びない脅威から人を守るのではなく、現実にある苦しみや悲しみを共に乗り越えるようなコミュニケーションがしたい。