『名探偵コナン』ラム編は大きな転換点となるーーかつてない展開となった最新103巻を読み解く

『名探偵コナン』ラム編の特殊性

※本稿は『名探偵コナン』103巻のネタバレを含みます。

 『週刊少年サンデー』にて連載中の『名探偵コナン』。現在103巻まで刊行されている長寿シリーズであり、なおかつ全世界発行部数2億7000万冊を突破。日本漫画史に残り続ける作品でありながら、現在進行形でファンを増やし続けている類稀な作品だ。

 そんな『名探偵コナン』では現在“ラム編”が進行中。コナンにとって最大の倒すべき強敵である黒ずくめの組織、そのNo.2とされる“ラム”の正体が明らかとなり、この先の展開に注目が集まっている。本稿ではそんなラム編について振り返り、今後の展開を考察したい。

 ラム編はその前章である“バーボン編”の終わり際、復活を遂げた赤井秀一の元に組織に潜入しているキールこと水無怜奈からメールが届く場面から始まる。たった3文字「RUM」とだけ書かれたメールは、読者には次なる敵が大物であることを予感させた。

 組織のメンバーがコナンに接近してくる展開はこれまでも度々描かれてきた。最も多いのはコナンに接近する3人のうちのひとりが組織のメンバーというパターン。例えば“ベルモット編”では、英語教師のジョディ、校医の新出智明、謎の男赤井秀一といった面々が候補者であった。上述した“バーボン編”では女子高生探偵の世良真純、大学院生の沖矢昴、探偵の安室透が候補者となり、コナンや読者を翻弄した。その構図は“ラム編”もおいても同様であり、コナンたちが通う帝丹小学校の臨時教師である若狭留美、警視庁刑事部捜査一課の管理官を務める黒田兵衛、コナンたちの住む毛利探偵事務所の近所にあるいろは寿司で板前をする脇田兼則が候補者であった。コナンが彼らに嫌疑をかけたのは、ラムが義眼であるという情報と3人の特徴が一致したからだ。

 ここからはラム編の核心に触れていきたい。ラムの正体が判明したのは原作コミック100巻。赤井やジョディが所属するFBIのメンバーが相次いで組織の手によって殺害される「FBI捜査官連続殺害事件」の最終話にてその正体が明らかとなった。その正体はいろは寿司で働く脇田兼則。自身の目的の達成を達成するために板前に化けているが、その目的は今なお不明のままだ。同じく組織の一員であるバーボンこと安室透に対し、執拗に工藤新一の情報を求めるメールを送るなど不審な動きを見せているラム。101巻に収録されている帝丹小学校の同窓会を巡るエピソードでは、灰原哀(=宮野志保)の実姉である宮野明美について脇田が探るような描写も描かれている。しかしいずれもその目的について核心を突く描写はまだ描かれておらず、ベールに包まれたままだ。果たして脇田=ラムの目的とはなんなのか。今後の展開に注目したい。

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