【漫画】家族に与えられたトラウマを解消する方法は? 少女の成長を描いた漫画が考えさせられる
――作品の制作経緯について教えてください。
小野寺こころ(以下、小野寺):アシスタントをしながら読み切りを描いていた2年前に作った漫画です。作品自体はいつかどこかで描けたらと思っていたアイデアでしたね。「モーニング」の編集さんに声をかけられていて、青年誌向けのネタだったこともあり「モーニング月例賞」に応募して佳作を受賞しました。
――今作を振り返って思うことや手直ししたいと感じる箇所は?
小野寺:その時のベストを尽くしていたと思うし、これはこれで気に入っているので直さなくてよいと思ってます。
――消えないトラウマと少女の成長を描いた物語ですが、どのように着想されたのでしょう。
小野寺:実体験とフィクションを半分ずつで考えました。誇張して描いているとはいえ、親に読まれたら苦い表情をされるかもしれません。他の読み切り作品も含め、しんどい思い出を漫画に描いて形にして一旦忘れるイメージなんですよ。自分の中である程度の整理ができて答えの出た出来事に限られますが……。そんな感じで漫画を書き始めました。
――制作に当たって心掛けたことは?
小野寺:バッドエンドでもよかったのですが、ハッピーエンドにしないと受賞できないかなと。そのために真守君という彼氏を登場させました。彼の登場から「嘘くさい」という意見もあるのですが、それはフィクションだという点では正解なんです。個人的にもそれで終わるのは納得できなかったんですよ。だから最後のモノローグを黒くして、完全な救いではないことをアピールしたつもりです。
――主人公の家族はネガティブに描きつつ、真守君の家庭は明るく描かれていました。「家庭」という概念に希望を持てる展開でした。
小野寺:叶わなかったことに対しては執着してしまいますからね。
――ゴミ袋を被ったカットが個人的にはハイライトでしたが、あの場面については?
小野寺:言葉で説明するより、絵がカッコいい方が印象に残るからです。
――同様に「だんしゃり」という言葉も本編に一度も出てきません。
小野寺:そうですね。幼い印象や大人になりきれていない感じが好きで、それに「断捨離」って漢字は角ばっているので、余計にひらがなかなと。
――また小野寺さんは「サンデーうぇぶり」で新たなら漫画『スクールバック』連載されていますね。こちらについても教えてください。
小野寺:距離感のちょうどいい用務員・伏見さんと大人に苦しむ高校生たちの話です。これは自分が中高生時代に嫌なことを書き留めたメモを参考にしながら、「学生時代にこういう大人がいたらよかったのに」というアイデアを形にしました。毎回ラストに救いのある安心して読める内容になっているので、こちらもぜひ読んでもらえると嬉しいです。