【漫画】あの人が“運命の人”だったのではーー誰にもあり得る記憶を呼び覚ますSNS漫画が心に刺さる

本作は“あるあるネタ”?

――『運命の人』はどのようなコンセプトで制作しようと思ったのですか?

大越:聞こえが悪いかもしれませんが、「こういう漫画ってあるよね」みたいなあるあるを煮詰めて制作しました。

――そういう意味では思春期真っ盛りの織田と、ミステリアスな佐伯という設定もあるある感がありますね。

大越:はい。両者とも“あるある”な人物を設定したつもりでした。また、作中の台詞にも登場する、綾波レイは非常にアイコニックなキャラクターです。『新世紀エヴァンゲリオン』を初期からリアルタイムで体験できた世代でなくても、彼女のイメージはかなり共有されています。その力や影響を借りて佐伯を演出した部分もあります。

――ストーリー的に織田や佐伯の親が登場しても良いように感じましたが、大人がほとんど登場しない内容でした。あえて高校生だけに登場人物を絞った狙いはありますか?

大越:“ページ数の都合上そうなった”というのが一番正しいようにも思います。30ページ程度では、あまりたくさんの人間関係に焦点を当てることができないので。一応先生や親の姿を出してはいるので、それで想像してもらえるかなと。

――クラスメイトを見下している様子、“同じ人種”だと思っていた佐伯が夢を持っていたことに焦燥感を覚える様子など、織田が抱いている思春期特有の心理がとてもリアルに描かれていました。

大越:それも“あるある”を意識しています。織田に限らず、登場人物が考えるようなことの種は自分の中に確かにあったのでしょうが、それらを過激に、ある意味装置っぽく肉付けしました。

 また、作中には自分が実際に言われたことのある台詞もあります。自分の言葉と他人の言葉を混ぜ合わせて、「どういう人がこういうことを言うんだろう」と想像しながらキャラクターを作りました。結果として織田も佐伯も自分とは違うタイプの人間として描けたので、その点は満足というか、安心しました。

「絵に苦手意識がある」

――織田が自分自身のしがらみと向き合い、そして前を向こうと思って吹っ切れるラストがとても爽快感がありました。構想段階からラストは熱くしようと決めていたのですか?

大越:ラストは当初から構成していました。ページ数に規定があったため、「もう少し枚数があれば、ラストに割いてもっと盛り上げたかったな」という気持ちもあります。

――タッチがどこか水墨画のような独特な雰囲気を感じました。作画をする際のこだわりなど教えてください。

大越:自分では独特なのかよくわかりませんが、ありがとうございます。絵に苦手意識があるので、必死に描き込んだ結果、このような感じになりました。

――作画でいうと、電車内や街中など背景もしっかり描かれており、そこも作品の雰囲気をより一層高めていました。背景を描く際はどのようなことを意識していますか?

大越:「その空間の空気を描けたらいいな」と思って描いています。何かを見た時の、言葉を介さない感覚の記憶があると思うのですが、それをいつも額の斜め前当たりに持ってきて描くようにしています。ただ、上手くいかないことも多いです。

――最後に今後はどのように活動していきたいですか?

大越:現在は新しい活動場所を探している最中なのですが、「どのようなスタイルになろうと、少しでも長く漫画を描けていけたら」と思っています。なんというか、描き続けることで、最終的に何か・誰かのサンプルになりたいです。また、Twitterに過去作や掌編を掲載したり、掲載情報などを宣伝していくので、チェックしてもらえると嬉しいです!

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