【ライトノベル最新動向】いよいよ結婚か? 『わたしの幸せな結婚』最新刊がランキング1位に
8年と4カ月もの期間を明けて4月に『ウィザーズ・ブレインⅨ 破滅の星〈中〉』(電撃文庫)が出て再開となった三枝零一「ウィザーズ・ブレイン」シリーズ。これだけ開いても読者の支持は続いていたようで、5月10日発売の『ウィザーズ・ブレインⅨ 破滅の星〈下〉』(電撃文庫)がランキングの6位に入った。
繁栄を謳歌していた人類に降りかかった突然の異変が、人類を7つの巨大なドーム都市「シティ」に押し込めてしまった世界。「I-ブレイン」と呼ばれる超高速での演算を可能としたコンピュータを脳内に持つことで、物理法則すら自在に操る力を持った魔法士が作られ、争い事に投入されるようになっていた。
そんな魔法士のひとり、天樹錬がシティ・神戸の住民のために犠牲にされようとしていた少女を助けようとしたことで戦いが繰り広げられる第1巻から物語はスタート。さまざまな力と生まれ育った背景を持った魔法士たちが登場し、交流や戦いなどを経ていく中で、魔法士と人間との間に横たわる深い確執が浮かび上がり、やがて存亡をかけた両者の激突へと至る。
『Ⅸ 破滅の星〈上〉』は魔法士たちが組織した「賢人会議」が、人類に対する全面攻撃を発動したところで終わり、いよいよ本格的な決戦が始まると思わせたものの、その後長き沈黙に突入。そして再開したシリーズは、『Ⅸ 破滅の星〈中〉』で「黒衣の騎士」こと黒澤祐一が、「賢人会議」でも最強の魔法士で、「双剣」とあだ名される二重(デュアル)No.33ことディーを相手に壮絶なバトルを演じてみせる。最新刊『Ⅸ 破滅の星〈下〉』では、3000万人もの人類を囮に「賢人会議」を殲滅しようと企む「シティ連合」と、人類の殲滅だけを願う「賢人会議」の戦いに、どちらも救いたい天樹錬らが第3勢力として介入していく。
演算能力によって物理法則をねじ曲げ異常を起こすといった、科学とファンタジーが融合したような「魔法士」の設定は、そのまま「魔法科高校の劣等生」に登場して、体系化された魔法を操る「魔法師」と重なる。いわば「魔法科高校の劣等生」の源流とも言えそうな魔法アクションとして、ライトノベル好きなら読んでおきたいシリーズ。同時に、ひとりの命を捨てて大勢の命を救うことは正しいか、生き残るために敵を全滅することは正義かといった問題意識を常に問い続けている作品として、優しさが失われつつある今、読んで自らの考えの参考にしたいシリーズだ。