『ガクサン』作者・佐原実波に聞く、学習参考書の奥深い世界「大人になると、もっと多様な目的で使えます」
学参はなぜ老舗と紙が強いのか
――個人的な印象ですが、学参は老舗が強い印象です。私が20年前、受験生の頃に使った『赤本』や『チャート式』が今でも書店の一角を占めていますからね。
佐原:担当編集さんも、『赤本』や『チャート式』が売場で占める面積に驚いたみたいです。なんて盤石な体制なのだろうと(笑)。『赤本』が出る時期は、本屋さんも頑張って棚を作っているという印象があります。
――学習環境が変化する中でも、異例ともいえるロングセラーが多いことに驚きです。
佐原:受験生は先輩の体験談を参考にする人が多いので、『赤本』や『チャート式』は知見が蓄積され、使い方の文化が存在するから売れ続けるのではないかということです。あとは、学校の先生サイドで薦められたり、実際にそれらの学参を使った両親からのアドバイスを受けて買うケースもあるようですね。
――そして、学参は紙がいまだに強いですよね。電車の中で読まれている紙の本は、ほぼ学参と言っていい気がします。
佐原:要点を書き込んだり、蛍光ペンでラインを引いたり、付箋を貼ったりして、使い込んでカスタマイズするなら紙が絶対的に便利ですよね。それに、学参は学生の子にとっては毎日一緒に過ごすパートナーです。知らず知らずのうちに、本と一緒に過ごす楽しさも共有できているんじゃないでしょうか。
――確かに、電子書籍はカスタマイズが難しいですね。
佐原:学習自体はアプリやYouTubeの動画でもできますが、物理的な使い勝手の良さは紙が圧倒的に優れていますね。それに、自分用にカスタマイズするのって、結構楽しい作業だと思うんですよ。
――デジタルデバイスの使い勝手が劇的に進歩しないと、学参が完全に電子書籍に移行することはないのでしょうね。
佐原:先日、高校生の子たちと学参をテーマに話をしました。単語を覚えるのはアプリを使っていますし、学校の授業でもタブレットを使っているそうです。でも、学参はやっぱり紙を使う子がほとんどなんですね。用途や使い勝手に合わせて、使い分けている印象です。
学参は大人になってからの方が楽しく読める!?
――佐原先生は取材に当たって、何冊も学参を買いこまれたと思います。お好きな学参はありますでしょうか。
佐原:『関正生のThe Rules 英語長文問題集』シリーズ(旺文社/刊)などで英文を読むのが面白いですね。1ページくらいの程よい文量なので、頭の体操になります。英単語や英熟語を覚えていなくても、英文の構造や解説を見れば、謎解き的な感覚で楽しめるんですよ。それに、歩きスマホの事故といった今どきっぽい英文もあったりして、ちょっとしたコラム的な感覚で読めます。
――それだと、大人が読んでも楽しそうです。
佐原:受験生の時は、いわば世の中に出ていく準備のために学参を使いますよね。それが大人になると、もっと多様な目的で使えるんです。例えば、大河ドラマを見て日本史について知りたくなった時など、好きなものの知識を深めるために開くのもありですね。
――先生のお話を聞いて、正直、学参がこれほど奥深い世界とは知りませんでした。漫画の方も絶好調で、これから新しい展開が見られそうですね。
佐原:『ガクサン』は、身近な存在だけれど意外と知らない世界を深く知りたい方に、ぜひ読んでいただきたいと思っています。漫画も新しい展開になってきています。これまではうるしの成長を中心に描いてきましたが、この先は福山の成長も見せていけたらいいなと思っています。気になった方はぜひ、単行本を買い求めていただけると嬉しいです。