【注目の漫画レビュー】もし自分の家族がいじめの加害者だったら……誰もが気を引き締める『娘がいじめをしていました』
加害者と被害者、どちらの人生も踏みにじるいじめ
本作は愛にも小春にも寄り添うことなく、ふたりの母親の姿を淡々と描いている。衝撃的な描写はないのに、いじめの残酷さがクローズアップされ、私たち読者はいたたまれない気持ちになる。
たしかなのはいじめが何も生み出さないうえに、加害者と被害者、どちらの人生も踏みにじっていく行為であるということだ。ふたりの母親は物事を穏便に済ませようとする自分たちの夫にジレンマを感じる。なぜ自分の娘がこんなことにーー答えの出ない問いを自分に投げかけ続ける。
そう、この物語の主人公は、いじめの加害者と被害者ではなく、ふたりの母親なのだ。母親たちは試行錯誤しながら娘のことを考える。まさか自分の子どもがいじめの当事者になるなんてという驚きと、夫の無理解に苦しめられるのだ。
大人の読者であれば彼女たちに感情移入をして読み進めることができるだろう。いじめは決して、よそで起きている出来事ではない。その事実はすべての人が意識しておかなければならないと、読んだあと誰もが気を引き締めるだろう。