『H×H』シャルナークから『進撃の巨人』ベルトルトまで……命懸けで頑張っているのに報われない少年漫画キャラ3選
※本稿は『HUNTER×HUNTER』『DEATH NOTE』『進撃の巨人』のネタバレを含みます。
ふと振り返れば、どの人気漫画にも、ある属性を持ったキャラクターが存在していることに気づく。どんなに努力しても報われないという、「努力」が肝である少年漫画にしてはレアな人物たちだ。
しかし、意外と報われないキャラクターの歴史は長い。
少年漫画に絞っても古くは『デビルマン』主人公の不動明がいるし、続いて『ドラゴンボール』のヤムチャ、『銀魂』の長谷川や山崎といったキャラも登場している。数え始めればきりがないと言っても良いほどだ。
この記事ではあえて物語の主人公やメインに近いキャラは避け、見逃されがちな報われないキャラを『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博/集英社)、『DEATH NOTE』(大場つぐみ・原作、小畑健・作画/集英社)、『進撃の巨人』(諫山創/講談社)からピックアップした。
『DEATH NOTE』ならエルやメロ、夜神総一郎、『HUNTER×HUNTER』と『進撃の巨人』は殺されたキャラ全員と言っても過言ではないが、あえてメインキャラクターは外したうえで、あっけない理不尽な死を迎えた3人を選んでみた。
シャルナーク(HUNTER×HUNTER)
シャルナークは『HUNTER×HUNTER』に登場する窃盗団「幻影旅団」のメンバーである。過去に幻影旅団は本作のメインキャラクターであるクラピカの故郷の仲間たちを皆殺しにしていて、クラピカはその復讐のために人生をかけることとなった。
しかしクラピカが殺した幻影旅団のメンバーは決して多くなく、彼らの命を狙っているのはクラピカだけではなかった。それを最初に示す役割を果たした犠牲者のうちのひとりがシャルナークだ。彼はクラピカではない、ある人物に不意打ちを食らい、あっけない最期を迎えることになる。この場面は突然すぎるうえにシャルナークの遺体の描写が衝撃的で、リアルタイムで読んでいた私は思わず前のページから読み返した。
シャルナークは幻影旅団のブレーンであり、団長がいないときは団長代理のような役目を務めるほど信頼されている人物であった。容姿端麗で冷静かつ穏やかな性格をしていることから、読者人気のあるキャラクターでもあったのだが、そんな彼は、まるで登場したばかりの名のない人物のようにあっけなく死んでしまった。彼が死ぬならクラピカが手を下すときだと考えていた私は、クラピカ対シャルナークの頭脳戦を楽しみにしていたのでショックだった。
『HUNTER×HUNTER』で重要人物がいきなり最期を迎えることは多々あるが、シャルナークの冴えた頭脳は、今後の戦闘でもっと生かされるはずで、彼が死ぬときの描写も壮大だろうという淡い期待は砕かれた。
『HUNTER×HUNTER』には報われないキャラクターが多いが、その中でひとり選ぶなら私はシャルナークだと考えている。
マット(DEATH NOTE)
『DEATH NOTE』後半で登場した、エルの後継者であるニアとメロに次ぐ頭脳を持っていたマット。彼の存在を覚えている人がどれほどいるだろうか。
漫画『DEATH NOTE』の前半は、キラ(夜神月)と世界でもトップレベルの捜査能力を持つエルの対決が大きな見どころだった。手に汗握る名勝負だったが、最終的にエルが命を落とし、後半では彼の後継者と目されていたニアとメロが、エルに代わってキラの敵となる。
しかしニアと組むように依頼を受けたメロは断り単独行動をとる。気の強いメロは、エルの後継者になることを目指してたゆまぬ努力を続けていた。しかし優秀なニアを追い越せず、劣等感を抱えている。
メロの願望は「ニアに勝つこと」だ。つまりニアより先に、キラを倒すことと同義である。
メロには、ニアにない行動力があった。時に危険を伴うのだが、メロの賢さと併せるとそれはキラにとって大きな脅威となる。メロの願望とは異なっていたかもしれないが、彼の存在がニアとキラの勝敗を決定的なものにした。
私は『DEATH NOTE』の報われないキャラはこのメロにしようと思っていたが、ふとメロには仲間がひとりいたことを思い出した。ニアとメロと同じ孤児院で育ったマットである。
ゴーグルとボーダーシャツが個性的な彼は読者から好かれやすい特徴を持った人物だったが、原作で登場したコマ数はわずか16コマである。死に至るまでの過程も短く、ニアやメロに次ぐ実力を持っているのにその実力を発揮できないまま、ちょっとした油断が仇となって射殺されてしまうのだ。
マットはメロに協力したために人生を狂わされたわけだが、それにしてもマットに関する描写は少なすぎた。メロ以上に報われないキャラである。