『進撃の巨人』エルヴィン・スミスはなぜ愛され続けるのか “生誕祭”で考える熱き合理主義者の魅力
本日10月14日は、諫山創による人気コミック『進撃の巨人』(講談社)に登場する人気キャラクター、エルヴィン・スミスの誕生日だ。SNSでは「#エルヴィン・スミス生誕祭2022」等のハッシュタグ付きで、思いのこもったファンアートが多数投稿されている。
あらためて、その魅力はどこにあるのか。謎に包まれた「巨人」の出現により滅亡の淵に立たされた人類が、巨大な壁を築き、そのなかで生活しているという作品世界で、危険を冒して壁外の活動や巨人との戦闘を行う「調査兵団」。その13代団長が、エルヴィン・スミスだ。
その決断力と高い統率力で、団員からの信頼が厚いエルヴィン。作中屈指の人気キャラクターであるリヴァイ兵長のように常人離れした能力を有するわけではないが、物静かな佇まいのなかに鋼の意志と燃える炎を抱き、人知れず苦悩しながらも「巨人」の謎に追っていく。
その過去や“結末”についてはネタバレを控えるが、エルヴィンを語るキーワードのひとつとして、「覚悟」という言葉が挙げられるだろう。目的達成のためにはあらゆる代償を払う「覚悟」ゆえに、少なくとも見た目では冷静に淡々と、団員にとって残酷な判断も下していく姿が印象的だ。
作品の序盤においては「冷徹な合理主義者」というイメージを持つ読者も多かったはずだが、その合理的思考のもとでは自身もコマの一つであり、目的達成のために自らの命を賭けることも厭わず前進する姿が、だんだんと共感を集めていった。死亡した団員たちの遺志を背負い、彼らの命に意味を与えるのだと、エルヴィンは調査兵団を鼓舞する。その檄は、アニメを楽しむ海外のファンにも喝采を浴びた。
エルヴィンはまさに「心臓を捧げよ」という兵団のスローガンを体現する存在であり、人に厳しく、自分にはさらに厳しい、有事におけるある種の理想的なリーダー像を示すキャラクターだといえるだろう。リヴァイやミカサのような圧倒的な戦闘力も、アルミンのような卓越した発想力もなく、意志と覚悟の力で物語を推進させたエルヴィンの姿は、いまもファンの心に焼き付いている。