「マンガ大賞2023」大賞は『これ描いて死ね』 受賞者・とよ田みのる「受賞を聞いてイスから転げ落ちた」

「マンガ大賞2023」レポ

 同時に、漫画において大切なことも。絵が綺麗なことに越したことはないが、その絵によって紡がれる物語が人を突き動かすようなものでなければ、ひとりよがりになってしまう。思いを物語にする原作者がいて、その思いを汲み取って最良の絵によって表現する絵描きがいて、そうやってできあがったマンガのどこが良くてどこが悪いかを感じ取る読者がいる。さらにライバルまでいることで、マンガはより高くより遠くへと進んでいけるのだということが伝わってくる作品になっている。

 漫画を描く漫画家を描いた漫画には、藤子二雄Aと藤子・F・不二雄がコンビを組んでいた「藤子不二雄」の誕生から成長を振り返るような藤子不二雄Aによる『まんが道』がある。『これ描いて死ね』にはその『まんが道』への敬意がところどころに感じられる作品となっている。受賞式でとよ田みのるは、「漫画と言えば藤子不二雄先生が好きで、僕の中では漫画=藤子不二雄先生なので、名前をお借りしました」と話して、大先輩への思いを改めて表明した。

    『これ描いて死ね』では、主人公たちが同人誌即売会のコミティアに出店を目指す描写が登場する。とよ田みのる自身もコミティアへの参加経験がある。この時の感想を「こんなにも純粋に創作そのものに向かい合っている、売れたいという目的で描いているのではなく、表現したいから描いている風に見えて、カッコ良いなあと思ってコミティアがすきになりました」と振り返った。そして、今もコミティアに出店し続けている同好の士たちに「すきに描きなよと言いたいですね」と、自由に創作する大切さを訴えていた。

「マンガ大賞2023」の結果

大賞『これ描いて死ね』とよ田みのる102ポイント
2位『あかね噺』馬上鷹将、末永裕樹 100ポイント
3位『女の園の星』和山やま 65ポイント
3位『正反対な君と僕』阿賀沢紅茶 65ポイント
5位『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ 59ポイント
5位『日本三國』松木いっか 59ポイント
7位『さよなら絵梨』藤本タツキ 44ポイント
8位『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』地主 34ポイント
9位『劇光仮面』山口貴由 32ポイント
10位『タコピーの原罪』タイザン5 29ポイント
11位『光が死んだ夏』モクモクれん 22ポイント

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