まるで『BLUE GIANT』のB面ーー小説『ピアノマン』で知る“本当の沢辺雪祈”

小説で知る『BLUE GIANT』沢辺雪祈

雪祈の深部と共に感じる、もう一つの音楽

 雪祈は超現実主義者。それは彼がプロフェッショナルで夢に対してどこまでも本気だから。それゆえに、自分にも相手にも厳しくて、思ったことを包み隠さず口に出してしまう。でも、果たしてそれは本当にそうだったのだろうか。彼は本当に全てを伝えてくれていたのだろうか。

 『ピアノマン〜BLUE GIANT雪祈の物語〜』を読むと、彼のストレートかつシンプルな物言い、思考の裏には、とてもそのセリフ数では収まらないほどの複雑な感情が隠れていたことを思い知る。本作では、その感情が丁寧に補完され、私たちが知らなかった、彼の優しさと脆さを感じる人間臭い一面が輝いて映るのだ。

 そんな雪祈の深部に触れることで、漫画や映画での各シーンの見え方がまた変わってくる面白さがある。さらに、彼の目線で語られる玉田や大の音は、その言語化もさることながら、行の間隔を巧みに利用した小説ならではの表現技法にも驚かされる。

 カセットテープで例えるならば、漫画や映画の『BLUE GIANT』はA面で本作はB面。ぜひ“本当の沢辺雪祈”と共に紡がれるB面の音楽を堪能してみてほしい。

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